そういえば・・・・









「そういえば、あたし何か忘れてるって思ってたんだよね」

「は?」

春うららかな午後、のんびりと洗濯物を畳みながら言葉をこぼしたナツミに、
ソルは思わず首を傾げた。
フラットから見つめる空はどこまでも青く、眩しい陽の光の下は心地よい。

「何を忘れてるんだ?」

ナツミはうーん、と口を尖らせた後、



「いつも傍にあって気づかないもの」



さらりと風に乗せるような声で呟いた。
ソルは思わず瞬きを繰り返す。ナツミの言わんとしていることが理解できるようで理解できない。
まさにソルの瞳はそう訴えているようで、ナツミはくす、と笑いながら言葉を続けた。

「たとえばこの青い空だったり、フラットのあたたかさだったり」

それはナツミにとってかけがえのない大切なもの。

「おいしいご飯だったり、信じられるものがあることだったり」

どれも何気ない日常の中に存在していて、でも案外気づかないもの。
なくしたくない大切なものだ。

「忘れたくない、なくしたくないもの、それを大切に思う気持ちをいつも忘れずにいたいって思う気持ち」

あぁ、とソルはナツミの言葉に頷く。
きっと誰にでもある守りたいと願うもの。なくしたくないと、この手を離したくないと願うもの。

「でもね、忘れてないの。ただちょっとだけ記憶の片隅にあるだけ」

常に覚えているわけじゃない、こう、ふと思い出すことがある。
それが大切なんだってこと。

「ふーん。なるほどね」

「でもね、あたしさ、」

くすくすと笑いながらナツミはソルの瞳の奥を見つめ、ソルもまたナツミを見遣る。
瞳の奥に隠された想い。それは言葉にするには少しだけ恥ずかしさを伴って。
ナツミの言わんとすること、そしてソルが思っていること。
不思議な波長は真っ直ぐな糸が繋がっているように二人の心に響いた。
どこからともなく笑みが溢れ、自然と二人の影が寄り添う。


「それ以上は俺の言葉だろ」


大切で、なくしたくない人。
好きで、好きと言う言葉だけでは足りないと思うのは。
優しく唇を奪い、奪われる。
いつも忘れない、傍にいて欲しいと願う存在はこの人だけだと思う。



――――あたし、ソルのことはいつも覚えてるんだよ。


だって、忘れられるわけがないじゃない。
そういえばと言う言葉を使うわけがないんだもの。
ナツミは微笑みながらその腕に甘え、頭を添える。



忘れてないものを思い出すわけがないのは、傍にいる大切な存在だから。
頬に触れる風が二人を包み込む。
今日もまたこの世界には心地よい風が吹き、空は青く光っていた。









かなりお久しぶりの更新です。
そのお久しぶりがソルナツですが、DS移殖記念と言うことで。
もちろん予約しましたよv最初にプレイするのはやっぱりソルナツです。