空を見上げて






にわかに吹く風が私の長い髪を揺らす。
森の中の茂みがざわざわと騒いでいた。
早春の温かい風がさあと吹く。


「どうした?」


彼は私が足を止めていたのに気づき、こちらに歩み寄った。


「ううん。ちょっとね……」


あの日から私達はまた旅を続けている。
依然と何が違うか?と問われたら、恐らく信頼の度合い…だろう。
私は彼を信頼し、また彼も私を信頼してくれるのだから。


「行くぞ」

「うん」


彼の言葉に首を縦に振ると、また歩き始める。
彼の傍に寄ると、彼の手が私の指を絡めた。
絡められた指を握り返す。
旅はまだ終わらない。
今ごろ一人で彼が帰ってくるのを待つ彼女のことを思うと、気が引けるのだけど。
こうやってこの人の隣で歩けるということがどんなに幸せなことなのか、痛いほどわかる。


「ねぇ」

「ん?」

「ううん、何でもない」

私はぎゅっと握る手のぬくもりを感じていた。

「……大丈夫だ。アイツは絶対に帰ってくる」

何でこの人は私の意図することがわかるのだろうか。
嬉しくて涙が出そうで、必死でそれを堪えた。


「さ、次の街までもう少しってとこだろ。着いたら宿で休むぞ」

そう言って歩みを速めた。
木漏れ日が差し掛かる森の中で、彼が握り締める手を再び握るのは、多分必然。
季節は、また巡る。
あの日から一つ季節が巡ったそんな日のこと。



END