失敗しました
そーっと、そーっとね。
そう自分に言い聞かせて彼の背後に回る。
息を殺して、そう、そーっと。
気づかれないように……。
事の始めは些細な自分の好奇心だったと思う。
庭の切り株の上で座って読みふける彼の後姿。
いつも分厚い本を読みふけっている彼を見ているとなんとなーく驚かせたくて。
私が話しをしててもなかなか本を読むことやめてくれないし。
ただ、少しばかりの好奇心が勝った、その結果がこれだった。
彼の背後に回って、そっと近づいて、驚かせる。
子供が良くやるようなこと。
ただ、違うのは目を隠してだーれだ、じゃなくて。
抱きついてみようかなと思ったことだった。
同じくらいびっくりするだろうから、きっと。
だからそーっと近づいてみる。
まだ気づかない。
そーっと、そーっと。
一歩、また一歩と近づく距離に、あともう数センチというところで予期せぬことが起こった。
「わ―――ッ!」
「わーっ!!」
突然私の背後からアルバが大きな声を出したからだ。
その突然の出来事に驚いた私は目の前の石に躓き、彼の背後から思い切りコケて抱きついてしまった。
「うわっ!」
今度は彼が驚く番。
「何やってんの、ナツミ」
その後ろを通りかかったリプレが不思議そうに私たちを眺める。
「あ、あはははは……し、失敗しました」
「失敗?」
ただ苦笑いするしかなくて、誤魔化しているとそこを通りかかったガゼルが「朝からいちゃつくなよな、熱い熱い」とからかう。
「がっ…なっ……」
ガゼルの言葉に顔を真っ赤にして「違うってば、これは……」と説明しようとしたところで声に遮られた。
「ナツミ…」
「そ、ソル…」
「あのさ、お願いあるんだけど」
「う、うん?」
「よけてくれないか?じゃないと困るんだけど」
いつまでも抱きついた状態の私を見かねてか、ソルは冷静に呟いた。慌てて私は抱きついていた手や身体を離す。
「ご、ごめん」
素直に謝ると「いいよ。気にするな」と言ってぱんぱんと服の埃を落とした。
俄かに彼の頬に紅く染まっているのに気づいたのは私もガゼルも一緒だった。
あ、と言葉を漏らすとガゼルが一言余計なことを口走る。
「なぁ、ソル」
「何だ?」
「心地良かったか?」
「はぁ?」
「だって、思いっきりナツミの胸当たってただろ」
ニヤリと笑ってそう言う。その言葉にはっとして先ほどのことを思い出した。
ソルはと言うと顔を更に紅く染め上げる。
「なっ…がっ…」
口をパクパクさせながら、言葉にならない声を出す。
それは私も同様で。
しばらく口をパクパクさせた後にやっとのことで声を上げた。
「ガゼル―――――ッ!」
「うわっ!ナツミが怒った!!」
「待てッ!コラーッ!」
どたばた走りながらガゼルを追いかける。
走りながらも、あーあ、失敗しちゃったと口の中で舌打ちしながら。
今度は絶対に驚かせて見せるんだから、と心に誓っていた。
一方。
その場に取り残されたソルは本についた埃を払っていた。
「ね、ソル」
リプレはにこにこ笑いながら問う。
「ちょっとは嬉しかったでしょ。役得ね」
最強の微笑でそう言われただただ苦笑いして誤魔化した。
ガゼルもリプレも似たもの同士だと思ったのはこの時だったとか。
先ほどのことを思い出すと恥ずかしいのだが、少なくてもどこか嬉しい自分がいて、また一つため息ついたのはここだけの話。
END
*あとがき*
なんかすっごく書いてて楽しかったんですけど。こう言うノリが好きだったりします。
すいません、こう言う奴で(汗)ソルナツ+ガゼリプって感じ(苦笑)
こういう時の言葉の言い回しが下手くそだなーと心底思いましたとも。
頑張って精進いたします……すいません(反省)