支え
そっと彼の手に触れたのは、紛れもなく自分の意思だった。
いつもどおり屋根の上に登って月を眺める。
こちらに来てからの私の習慣だった。
月を眺めるとなんだかホッとして、一人で色々と考えるのが疲れたときなんて特に心が落ち着けた。
「ナツミ」
「…ソル」
彼は私の名を呼び、また私も彼の名を呼ぶ。
「やっぱりここにいたのか」
「うん。月明かりが心地よくって」
彼の言葉に肯定しながらも視線は月に向いていた。
「ほら、月を見てると心が落ち着くじゃない」
「そうだな」
「でしょ?だから」
そのまま言葉を続けなくても彼はわかってるから。
彼が本当のことを話してくれた。嬉しかったけれど、同時に不安もまた広がる。
私は、一体――――?
自分がどういう存在なのか。漠然と広がる不安を落ち着けるために月を眺めていた。
「ごめんな」
彼はポツリと呟く。私はその言葉に首を振った。
「ソルのせいじゃない。偶然でしょ?」
そう言って笑って、でも彼はわかっていたのだろうか?
ぐいっと腕を引っ張られて、彼の腕が私の肩を抱いた。
「本当に、ごめんな」
そう言ってくれるのと同時にぽろっと一雫こぼれ落ちた。
「泣いても、いいから」
彼がそっと私の耳元で囁くと私の瞳からまた一つまた一つとこぼれ落ちる。
「ごめ……」
「いいから」
彼の肩が心地よいから。彼は優しいから。
だから―――
「本当は不安なの。私はどっちなのか」
「うん」
「それにね、淋しいんだ…」
「ナツミ……」
「ここに来て、みんながあたたかいから大丈夫だって思うんだけど」
「うん」
「でもやっぱり自分の家も恋しくて」
「………」
「だけどもし帰るとしても、それもまた淋しくて」
「うん…」
「でも、みんなのためにも頑張らなくちゃって」
私って色々と考えすぎてまとまらないのが多いんだよねなんて苦笑いしながら彼の腕に抱かれた。
しばしの沈黙。月明かりがこんなにもまぶしい。
「ナツミはナツミだ。それは皆が一番わかってる」
「………」
「それに、お前は何も心配しなくていい。ナツミ、お前の信じる道を行け。俺たちはそれについてく」
「ソル……」
抱かれてる手とは反対の手がソルの膝の上に乗っている。私はそっとそれに触れた。
あたたかい、ソルの手。
「ナツミ?」
彼の怪訝そうになるのと同時か否か。
彼の抱く手がぎゅっと私を掴むのは。
多分、必然―――。
END