泣きたいような笑いたいような
気持ちと言うものはフクザツなものだと思う。
あたしはなんだかわからなくて泣きたいような笑いたいような、そんな表情を作っていた。
あたしはどっちなのだろう?
不安な想いが心を占めるのは、偏にどっちかにしかなれないからだ。
この力は本当に信用していいものなのか、それすらわからない。
けれど、戦闘になれば当然使うしかなくて。
使うたびに不安が心を蝕む。
この力はどちらのもの?
あたしは、どっちの人間なの?
魔王の力?
漠然と広がる心の闇はいつの間にか中途半端な顔を作っていく。
笑えればよかった。
吹き飛ばすくらいのそれがあれば良かった。
膝を抱えて座り込むその後ろにまさか彼が立ってるなんて気づかなくて。
自分の名前を呼ばれてはっと振り向いた。
「ナツミ」
彼の名を呟く。
「ソル・・・・・・」
呟けば、彼――ソルは静かにあたしの方へと近づいて来た。
静かにあたしの隣に腰を下ろすと、そっと片方の手を重ねる。
一つ瞼を閉じるとゆっくりと開いた。
静かに心を落ち着けようと、一つ息を吐いて。
「無理、するなよ?」
ソルは小さな声で呟く。
「無理なんて・・・・・・」
してないよ?と続けようとした言葉は闇に飲み込まれた。
声が、喉がからから渇いて言葉が続かない。
頭の中には並べられているその言葉が出てこなかった。
泣きたいような、そんな気分になって思わず俯く。
ソルはそれに耐えかねたようにぐいっとあたしの腕を引っ張った。
引っ張られた腕は横に倒れかけ、あたしの身体をソルが受け止める。
優しくそっと抱きしめられたその腕にじわりと心が熱くなった。
きっと今のあたしの顔はどうしようもない顔してるに決まってる。
その腕に収まったあたしは、ソルの腕をぎゅっと掴んで顔をそっと上げた。
「ごめんね・・・・・・ありがと」
「そんなこと・・・・・・気にするな」
泣きそうな顔を堪えて笑った。
泣きたいような笑いたいような、わからないその表情を作って。
ごめんな、と彼が小さく呟くと。
あたしはううんと静かに首を振った。
不安を煽るように、闇夜は広がっていく。
今宵は新月。
街の灯りが点々と照らされるのを横目で見ながら、ソルの腕に収まっていた。
きっと、あたしたちは今どうしようもない顔をしてるに違いない―――。
END