いつも変わらず
いつも変わらず、その笑顔でいて――――
そっと何かに気づくように閉じられていた瞳が開かれると、ぼんやりと横たわる景色を眺める。
何をやっていたんだっけと鈍い頭を動かし始めた。
あぁ。
そうか。
俺はついついこの場所が気持ちよくて寝てしまったんだっけと忘れそうな記憶を手繰り寄せた。
自分らしくもない。
こんな風に油断して寝てしまうなんてこと、以前ならなかった。
それが今では時々やってしまう。
そう。
コイツのせいで。
隣で瞳を閉じて前髪をそよ風になびかせている少女の顔をまじまじと眺めた。
いつからか、自分の中にすんなりと溶け込んできた少女。
彼女の名は―――ナツミ。
異世界から現れた、自分と同じくらいの歳の少女だった。
誰とも打ち解けない中で彼女だけは自分に話し掛けてきた。
それも真剣に。
普通ならありえないと思う。
けれど、ナツミは違ったのだ。
「ナツミ」
名を呼ぶも、まだ夢の中らしい。
「ナツミ」
もう一度名を呼ぶ。
すると、うーと言いながら手を目に当ててごしごしと擦りながら閉じられた瞳をゆっくりと開いた。
「ソル……」
「そろそろ戻るぞ。こんなとこで寝てると風邪引くし」
「あぁ、そっかー。寝ちゃったんだー」
まだ頭がはっきりと覚醒していないせいか、語尾はまどろみの中で消えそうだった。
ほら、といいながら彼女の手を掴むと少し引っ張る。その力のせいか彼女の体は少しずつ起き始めた。
「なんか、ソルが気持ち良さそうに寝てるの見てたら眠くなっちゃって」
そう言ってぺろっと舌を出してえへへと笑った。
その屈託のない笑顔にいつもどんなに救われていたか。
笑顔を見る度にそんな想いに駆られる。
恐らく、この想いは一生消えることはないだろうことは自分でよくわかっていた。
安心できるそんな居場所をくれる顔。
「そうか」
一言呟くと「そうだよー」と少し口を尖らせて言う。それが彼女なりの抵抗とも言うべき行動。
少なくても寝たのは自分だけが悪いんじゃないよと言いたげな顔をして。
すっと立ち上がると目の前にはアルク川が静かに流れていた。
よくナツミと二人でゆっくりと過ごしているこの場所は、恐らくお互いのお気に入りの場所の一つでもあった。
「さ、戻ろうか」
すっと差し出した手が自分の手を求めているのに気づいて。
一瞬躊躇するもその手を握る。
「帰ろ。あたしたちの家に」
にこっと笑って手は握ったままで。
その笑顔にいつも救われていた。
「あぁ、戻るか」
そう頷くと嬉しそうに彼女は自分の手を引っ張る。
いつもこんな日常があって。
この手はずっと握られたままでいて欲しいと願う。
だから。
いつも変わらず。
その笑顔でいて―――――。
END