いつだって僕は
いつだって僕は、君なんかに敵わない。
「あれ?キール?」
振り返った先に彼の笑顔。その茶色の髪の毛がふわりと揺れた。
その姿を瞳で捉え、一言呟く。
「ハヤト」
さあっと流れ、風が頬を切る。
アルク川の傍に腰を降ろして真っ直ぐと見たその視線の先に、鳥達が戯れている。
緑が生い茂った川の傍は涼しい風が流れていた。
アルク川に来る前は、リプレに頼まれた買い物をしに街へと繰り出していた。
たまたま家にいたから、とも言えるが、リプレは少し外の空気吸ってらっしゃいなと言って促したのだった。
でも、そこで。
あんな光景を目にするなんて思わなかった。
外の空気が気持ちいいせいか、少し気分良く歩いているとハヤトの後姿を見つけ、声をかけようと半分腕を上げかけた時。
ハヤトのその向かいに誰がいるのか見えてしまったのだ。
花屋のかわいい女性を。
その女性としゃべって、照れたようにしているハヤトを見ているとどうしようもない感情が沸き起こる。
嫌だ。
そんな醜い感情が流れ込み、くるっと踵を返してリプレに頼まれたものを買いに商店街の奥へと足を進めた。
声掛けたって、多分大丈夫なのに。
こんな顔してるのが見られたくなくて。
勇気がなくて、逃げた。
恐かったんだ、いつかハヤトの傍にいるのが自分じゃなくて他の女性といるかもしれないと。
ずっと一緒にいたいから。
買い物を済ませると足早にフラットへと戻り、そうして気づいたらアルク川のほとりまで来ていた。
言い知れない不安が自分の心を蝕んでいる―――――。
そっとハヤトは腰を降ろして、川の先を見つめた。
その横顔は、いつになくかっこよく見える。
「なんか、さ」
静かな空間に二人取り残されたように、周りの音が聞こえない。
ただ聞こえるのは互いの言葉のみ。
「うん」
「キールの背中が淋しそうに見えたんだ」
「・・・・・・え?」
不意打ちだって、思った。
何ですぐに気づいたんだろうか。
何で。
どうして、その言葉ばかりが浮かんでは消えていく。
「ど・・・うして・・・・・・」
「カン・・・・・・かな?通りかかった時に、妙にそう言う風に見えたんだ。で、顔見たら確信した」
「キール、どうしたんだ?」
核心の言葉を述べると、じっと自分の顔を見つめる。
逃げられない、その瞳に囚われてしまっていた。
「まったく、ハヤトには敵わないよ」
くすっと笑って一つため息をつく。
どうして欲しい言葉を言うのか。
何でわかってしまうのか。
ハヤトだから、余計に嬉しい。
他の誰よりも嬉しかった。
「?」
と頭にクエスチョンマークを浮かべているハヤトを見つめ、そっと傍に寄って耳元で呟く。
この想いは、きっとずっと変わらない。
自覚したあの日から、暖めてきた想い。
この想いを告げるにはまだ勇気がないけれど、でもいつか言いたいと願う。
呟いた言葉に少し頬を染めたハヤトに、また笑みを零して。
そよそよと風が通り抜け、陽がだんだんと傾き始める。
赤くなりつつあるその川の水面が見つめていた。
――――やっぱり、ハヤトには敵わないよ。
そう言った時のハヤトの顔を忘れないと思う自分がいた。
END
※あとがき※
落ちてないよーな。落ちたような(笑)
キールさん、ハヤトに片思い中。片思い、意外と好きですよ?
キール・・・それにしてもヘタレ(しっ)