冬の景色
パチパチと鳴るのは、その温かい炎のせいだ。
赤く灯る炎は火の粉を輝かせ静かに薪を燃やす。
暖炉の炎を見つめながら、少女――ナツミはくべなきゃと椅子から腰を上げた。
外は暗く、闇が広がる。季節は冬、寒くて暗い夜が外を支配する。
暖炉の前まで来るとナツミは薪をくべながら、後ろのテーブルで本を読みふける彼に尋ねた。
「ソル」
「ん?」
ぱらりと一つページの捲る音が聞こえた。
「あったかいよー」
「そりゃそうだろ」
そっけない返事。ナツミとしては予想していた答えが返ってきたことに少し不満を示す。
「ソル、冷たい」
ぷぅと頬を膨らませ、ソルに抗議するも相手にはしてくれず。
テーブルの反対側に座って毛糸で編物をやってるリプレと温かい紅茶を飲むガゼルがくすくすと笑う。
「ナツミ、諦めろよ。ソルがこうしてる時はちっとも聞いてくれやしねぇんだから」
「そうよー。特にこんな夜遅くだと余計に、なんだから」
くべていた手を休め、また自分の座る場所へと戻った。
本に集中してるソルの隣。
ナツミはテーブルに突っ伏すと「うー」と唸った。
「何やってるんだ?」
ガゼルが不思議そうにナツミを見るのだが、相変わらずソルは気にする様子もない。
呆れていると言うか、そんな顔をしてガゼルはナツミを見る。
「べつにー。ただそうしたかっただけ」
少しふてくされながら答えるのを見て、リプレはまたもくすくすと笑う。
「ソル、ナツミの相手もしてあげなさいよ」
本ばかり読んでないで、ね?と諌めると、ソルはようやく目の前の本から視線を移した。
ったく、私の時は反応なんてほとんどなかったのに。なーんでリプレの言葉には反応するかなぁ。
少し面白くないと考えていると、温かい手が私の頭を覆った。
「ナツミ」
「何よー」
「さて、何がお望みで?」
くすくすと笑いながら私を見て、やっぱりソルは私をからかってるんだなと思う。
いや、楽しんでると言えるだろう。
「ケンカ売ってる?」
じとっと視線を向けると、ソルは「いや」と至って真面目で。
あーもう、なんだか私が振り回されてるだけなのかと思ったら急に脱力感を覚えた。
「乙女心はフクザツなのよ、ソル」
「そうか」
「そうじゃなくて…もう。……いいや。私がバカみたいじゃん」
うーと机に突っ伏して、やっぱりこの人には敵わないなぁと思うのだけど。
リプレとガゼルはくすくすと笑って、私を見ていた。
何だか、恥ずかしい……。
周りに恋人同士だと認知されてからもうだいぶ経つと言うのに、今だに周りの反応が気になる。
頬を俄かに染めながら、うーうー唸ってると。
「ナツミ、部屋に行くか」
「………」
ソルの瞳はしっかりと私を捉えていて。
やっぱりこの人でなきゃダメなのだ。
何も言わずと、私がただしゃべりたいだけだと言うことも全て見越して。
薄い茶色の瞳が私の瞳に焼きつく。
「行く」
私の言葉を聞き届けると、ソルはガタッと音を鳴らすと椅子から腰を上げ、私もまた腰を上げた。
「ソル、送り狼なんかになるなよ」
ガゼルはニヤッと笑って言うと、「そっちもな」とソルもまたガゼルを見てニヤッと笑った。
「……っ!」
ガゼルもさすがに何も言えないらしい。
それを見ていたリプレが「大丈夫よ、そんなことさせないから」と至極真面目な顔をして言う。
ソルも私もこれには少し可笑しくて、あははと笑いながらリビングを後にした。
自然と私はソルの腕に自分の腕を絡め、ふふっとソルに笑いかけると、ソルもまた笑う。
ソルの部屋のドアを開け、電気をつけると窓の外に白いものが見えた。
「あ、雪……」
「どうりで寒いと思ったよ」
白い雪がちらほらと舞い降りる闇夜に、街灯は小さく灯っているのが見えた。
少し冷えた外を眺め、また今日と言う日の終りを感じる。
時計の針はもう深夜の12時近くを指していた。
「もうすぐで明日だね」
「そうだな」
視線はそのまま窓の外。別段特別と言うわけではないと言うのに、どうしても見入ってしまうそれ。
冬の使者は本格的な寒さを示す。
この聖王国の西の果てサイジェントでも冬は寒い。
自分の住んでいた日本も寒かったけれどなんて思っていると、後ろからソルの腕が私の首に絡めてきた。
「春になったら……」
私が言いかけたところで彼は言葉を制す。
「わかってる。約束だろ」
「うん」
もう自分達も20歳を迎えようとしていた。もう大人として独立していける年でもある。
旅立ちの年はすぐそこまでやってきていた。
「トリス達を見習わなきゃね」
「ああ」
以前、会った紫色の瞳を輝かせていた元気の良い彼女。
その隣にいる黒髪の兄弟子。
二人を見て、また自分達も思うところがあった。
季節は冬。
冬の使者が訪れる、そんな夜のこと。
街灯が小さく光のを見つめ、明日の朝も寒いんだろうなと思う冬の一景色―――。
END
【あとがきもといいいわけ】
えっと一応通常EDの2年後を書いてみました。まぁ、約3年後ですが。
私の某友達がガゼリプもいいよ!と言う話をしていたのを思い出して、
ソルナツ&ガゼリプであります。(無謀なことばっかするよな、私は)
ガゼリプはまだ付き合い始め?て、少しと言うところでしょうか。
で、三年後を考えた時に、ナツミもソルももう20歳超えるじゃんと言う事で、
じゃあ、この二人はずっとフラットにいるのか?と首を傾げてしまいました。
私としては旅に出るか、それとも二人で独立するのではと思ったんですよ。
まだ考えてる最中ではありますが、そのうち載せられたらなぁと思ってます。
その時にわかるでしょう。どっちになったのか(笑〕
ここまで読んでいただきありがとうございました。