誰が原因?













「まーったく、誰のせいだと思ってるのよ」



「ごめん」



「もう、気をつけてよねー」



そう言うとますますソルは頭を小さくしていた。
ここまで責めるつもりなんてないけど、でも恥ずかしかったのには変わりない。
しゅんとうなだれるソルを見つめ、一つ息を吐くと、抱きついた。



「・・・・・・ナツミ?」



「バカ」



一言そう呟くと、ソルの手が私の背に回り、ぎゅっと抱きしめてくれた。



こんな状態になったのには原因がある。
それは遡ること数十分前のことだった。














もう夕暮れの時間は過ぎ、闇が辺りを支配する。
夜遅く仕事から帰ってきた男たちは「疲れたー」等と言いながらリビングへと進んだ。

「あ、おかえりー」

どかどか入ってくる音に反応したリプレがキッチンから顔を出す。

「ただいま。飯食いてぇー」

開口一番にその言葉を吐くガゼルに苦笑いを浮かべながらも「はいはい、ちょっと待ってて」と言ってキッチンへと戻っていった。
恐らく今日はシチューなのだろう。キッチンから漂う香りがそう告げていたのを男たちは見逃さなかった。

「あ、ソル」

「ん?」

「鼻のてっぺんに黒いのついてるぜ」

「え?」

ソルが鼻に手を擦ると、手に黒いのがついた。
「ホントだなぁ」と相槌を打つのはエドスで、「顔、洗ってきたらどうだ?」と提案するのはレイドだった。

「あ、ホントだ。俺顔洗ってくるよ」

「おぅ、早くしろよー。食べちまうぞー」

「食ったら許さないからな」

キッと笑うガゼルを睨むとソルは洗面所へと足を運ぶ。
キッチンから鍋を持って表れたリプレとすれ違った。
「先盛ってて」と言うソルに「うん」と頷くとリビングへと足を運ぶ。

「あれ?そう言えばソルってどこ行ったの?」

リプレの質問にあぁと言うと「洗面所だよ。鼻に黒いのついてたから洗いに行ったんだ」とガゼルが説明する。
と、同時にリプレはくるりと身体を反転させた。

「あ、おい、リプレ・・・・・・」

「バカね! 今ナツミ達がお風呂に入ってるのよ! そろそろ上がってくる頃・・・・・・」

言いかけたところで、「ソルのバカっ!」と大きな声が聞こえた。
――――あぁ、遅かったかとリプレは片方の手で顔を覆うと、はぁとため息をついた。





リプレの忠告を聞いていなかったためか、何のためらいもなくその廊下を歩く。
事情なんて知らないソルは洗面所のドアをがらりと開けた。
開けた瞬間目の前に映ったのは。



白い肌を出して、髪の毛は濡れていて、上半身から膝までタオルで覆い隠していたナツミとばったり遭遇した。



二人の視線は宙に浮くこと数秒。
先に気づいたソルが「あ、これは・・・・・・知らなかったんだ! ナツミ!」と弁解するも、見る見るうちにナツミの顔は赤くなる。
ナツミの様子がおかしいと察したフィズが風呂場から顔を出したと同時にナツミの声がフラット中に響き渡った。




「ソルの・・・・・・バカ―――ッ!!」





その声は何よりも響いたのだと、後々皆に語り継がれることになろうとは、この時のナツミには知らないこと。
白く大きな月がサイジェントの闇夜を照らしていた。














「ごめんねー・・・ソル」

リプレが謝ると「いいよ」と言いながらソルはシチューを口に運んだ。
叩かれたわけではないが、ソルの胸の中にずきずきと痛みを覚える。

「ほら、ナツミも。私が悪かったんだから、拗ねてないでこっちきて、ね?」

少し膨れっ面でじとーっと俺の顔を見つめながら、ようやっと俺の前の椅子に座った。
いつもならここにガゼルとかもいても良さそうなものだが、リプレがややこしくなるからと、部屋へとさっさと追いやってしまったのだった。
レイドは部屋で剣をみがいているだろうと思われるし、エドスはアルバと一緒にお風呂に入っている。
ここにいるのはリプレとソルとナツミだけ。

そもそもソルに取ってある意味不服だった。
何で恋人同士なのに、そんな反応を見せられなきゃいけないのか。
とはいっても、乙女心というのはフクザツなのだと、ガゼルがため息をつきながら言っていたから、多分またこれは違うのだろうと言うコトは予測できる。
静かにシチューを口に運びながら、時はゆっくりと過ぎていく。
リプレから事情を聞いた今もまだ少し不機嫌そうな顔を出しているナツミは、まだソルの顔をじーっと見ていた。

かちゃんと食器とスプーンが重なる音が聞こえ、ようやく少し遅い晩御飯が終わった。
食器を片付けようとソルが立ち上がろうとしたところで、リプレに止められた。

「私が片付けておくから、ナツミと仲直り、して? ね?」

「・・・・・・・・・わかった」


そう言うとリプレはリビングを後にした。
この場にいるのはソルとナツミだけ。
ソルは、とりあえずと思って目の前のナツミを見据える。そうしてがたんと椅子から腰を上げるとナツミの前に来て、素直に謝った。



「ごめん、ナツミ」


頭を下げて、謝る。



「・・・・・・・・・ずるいよ。先に謝れたら、私謝れないじゃない」

「ナツミ・・・・・・」

「そりゃあ、怒ったけど、でもあたしだって悪いって思ったんだもん」

「でも」

俺が悪いんだし、とソルが言いかけたところで、ナツミに制される。

「まーったく、あたし機嫌斜めになっちゃったよ」

くすっと笑って、一言付け加える。

「誰のせいだろうね?」

「・・・・・・俺です」

「わかってるならよろしい」

くすっと口からいつも通りの笑みがもれた。

「気をつけてよー」

「わかってる」


「・・・・・・・・・あたしも、ごめんね。ちょっと怒りすぎた」


そう言うとナツミはソルに抱きつく。不意打ちに抱きつかれたものだから、ソルは驚きを隠せない。


「ごめんな」


小さな声でそっと耳打ちすると、ナツミは首を横に振り、「バカ」と呟いた。








謝れる関係がある、素直になれる環境がある。
お互いのことが大切だから、ずっとこの関係はこのままでいたいから。
誰に原因があるとか責めるんじゃなくて、それを許せればいいのだと、思うのは。




きっと。





二人の手は離れることないままでいて欲しいと願う、周りのおせっかいも少々ふくまれるからだった。












END




※あとがきもとい言い訳※
「ねこねこ☆パンチ」のキョウカさんの日記で『お風呂でばったりか部屋でうっかりのナツミ』のイラストがありまして。
風呂場でソルとナツミ遭遇、みたいなのに私絶対に話が書きたいと、イラストをみて以来書きたいと切に思っていました(怪しい)
そんなわけで使わせて頂きましたとも、そのシチュエーション(笑)
いやー、シリアスを二本続けて書くと、弾けたくなるのですよ。で、はじけた結果がこれ。
・・・・・・・・・・・・・ちーん。
まぁ、管理人の満足ですので、ええ。すいません〜〜〜〜〜!!(逃っ!)