秋雨





しとりと降る雨はにわかに私の体に寒さをもたらした。
寒い……。
もう秋も半ばだ。もうすぐで寒い冬がやってくる。


「ねぇ、ネス。もうすぐで冬だよ」


私は答えてくれない大きな樹に向かってしゃべる。
あの日からもうだいぶ経った。
ネスが帰ってくるのを私は傍にある家でアメルと護衛獣であるハサハと一緒に暮らしている。
毎日この聖なる樹に向かってしゃべって。
時には泣いて、笑って。
泣いてるときの方が多いけれど。
仲間達はそろそろ諦めた方がいいんじゃないかと言い始めたのはちょっと前のこと。
もう2年近くも経つんだ、と言ったのは誰だったのか。
ネスは約束を破ったことない。
だから、私は待つ。
そう言うと皆苦笑いしていた。


「ネス、まだ?」


見上げる樹に私は一種の淋しさを仰ぐ。
空は灰色の雲がのしかかり、雨がしとしとと降っている。
淋しさを紛らわせるためでもあった、この樹に向かってしゃべるのは。
私は何も知らなかった分、彼が罪の意識に苛まれていた分。
この時間を一人で過ごさなきゃいけない。
彼が一人で辛い思いをしている時のことを考えたら、遥かに短い時間だとわかってはいる。
だけど、やはり辛いのは、悲しいのは、待つことがどれだけ苦しいのか。
ぽつりと樹の隙間から滴る雫に肩を濡らして私は手を樹に当てていた。
しばらく時間が経ったのだろう。
背後から声をかけられるまで自分自身何をしていたのか記憶すら抜け落ちて。

「トリス、もう入りましょう」

アメルの言葉にこくりと頷くと私は樹にあてていた手を離した。

「また、明日ね?」

ね、ネス?
そう言って私は樹を後にする。
少し濡れた肩が私の熱を奪っているのに気づいたのは、家に入ってからだった。
もしここにネスがいたら「君はバカか?」というに決まってるなとくすりと笑って思い出していた。

あの、兄弟子の顔を――――。