■雪が降ったら(ウィルアティ)


はぁっと息を吐くと白いそれが目の前に現れて、どれだけ寒いかが解った。
ぶるりと思わず身体が震え、羽織っているコートを深く着込む。
すると一つ自分の首にあたたかいぬくもりが増えた。

「寒そうに見えたから」

くすっと微笑んで自分を見つめて。
その視線におとなしかった鼓動が早くなり、ドキドキと妙な緊張感が走った。

「あ、ありがとう・・・・・・」

「いえいえ」

最初に出会った時は自分よりも小さかったのに、数年会わないだけでこんなにも成長して。
その成長の早さに目を瞠る。けれど、それが嫌なわけじゃない。
むしろ―――嬉しかった。

「ねぇ、先生」

「はい?」

「寒いならこうした方がいいと思いませんか?」

そう言って自分の手に彼の手が重なる。また一つ増えるぬくもり。
やさしくてあたたかくて、安心できた。

「あったかい・・・・・・」

小さく呟いた言葉は白い息と共に吐き出され、空を舞う。
視線をふっと上げると白いものが振り降りるのが見え、視線をそれだけにあてる。

「ウィルくん、あれ・・・・・・」

「雪だ・・・・・・」

どうりで寒いわけだ、と呟く声が聞こえて笑う。その声が楽しそうに聞こえたから。
もう少しだけこのままでいたいなんて言ったらどんな顔をするんだろう。
寒さという言葉に預けて、ちょっとだけ雪に感謝して、あたたかなぬくもりを独り占めにしてることが嬉しかった。
今宵は雪の舞う夜。二人だけの時間がいとおしかった。





■聖なる鐘の音(キーハヤ)


街はどこもクリスマス一色で華やいでいた。
今年、初めてのクリスマスを過ごすキールはどうやらこの街の様子に驚いた顔を隠せないでいる。
何だか少し初々しくて、見ていて面白かった。

「なぁ、ハヤト」

「うん?」

「すごいな、これは」

「リィンバウムじゃ考えられない?」

「あぁ、本当にすごい。これが『クリスマス』というものなんだな」

「そ、見てて面白いだろ?」

「あぁ、面白い」

まるで子供のように笑って、そんな顔見てて嬉しくなる。
じゃあ、これは喜んでくれるだろうかとその時間が訪れるのを待った。

「3・・・・・・2・・・・・・1・・・・・・」

「ハヤト?」

訝しげな瞳が自分を見ていることはわかっていたけれど、今は無視。
そうして時計の長針がそれを指す。

「0!」

自分の呟いた言葉と同時に鐘の音が鳴り響く。
ゴーン、ゴーンと大きな音が街に響き渡り、キールはきょろきょろと辺りを見回した。

「クリスマスになった瞬間に鳴るんだよ、ここの教会は」

「そうなのか・・・・・・」

「うん。だから・・・・・・メリークリスマス!」

キールの瞳を捕らえて言葉を口にする。
キールは微笑んで言葉を接いだ。

「メリークリスマス、ハヤト」

二人で笑って、少し冷えた手を絡める。吐く息が白い。
けれど、この手から伝わる熱が熱くて、それがどうしようもなく離したくなくて。
やっぱり自分にはこの手が必要なのだと再認識した夜だった。






■サンタクロースの贈り物(ソルナツ)

いつから自分はサンタクロースの存在を信じなくなったんだろう。
そんなことを思い出して眉間に皺を寄せた。
それに気づいたのはとなりで本を読みふけっていたソル。

「ナツミ?」

「んー?」

「何、考え込んでるんだ?」

ソルの一言でようやく自分が眉間に皺を寄せてることに気づき、思わず眉間を擦る。
いけないいけない。

「サンタクロースの存在について」

「は?」

「いつから信じなくなっちゃったのかなーって」

「あぁ、なるほど」

ようやく納得できたのかソルは首を一つ縦に振った。
子供の頃はよくクリスマスがくるのがすごく嬉しくて、楽しみだったのに。

「人それぞれだろ、信じる信じないって」

「そうなんだけどさー、何か純粋さが減ってるなーって思って」

きらきらとした時間は時間と共に置いてきてしまう。
それがひどくさびしくて。

「・・・・・・じゃあ自分だけのサンタクロースがいればいいんじゃないか?」

「え? それ、どういう・・・・・・」

言いかけた言葉は封じられる。
思わず目を見開いて、でもすぐにその瞳は閉じられた。

「・・・・・・メリークリスマス」

少し照れた顔をして言うソルを見て、言っている意味がわかった。
何となくくすぐったい気持ちに駆られる。

「・・・・・・ありがと、サンタさん」

くすっと笑い返して思わず抱きしめると今度はソルが驚く番で。

「な、ナツミ?」

動揺するソルに思わず耳元で囁き、そうしてその手は自分を包み込んだ。
信じていればいることを教えられた夜。
少しキザだなと思いながらも、でもそれがソルの優しさだってわかってるから。

―――メリークリスマス、私だけのサンタクロース。






■蝋燭の明かりと君の声(ネストリ)

ふわりとその灯は闇の中に浮かび上がる。
その灯り一つだけで、何とも言えず静かな夜だった。

なぜそうなったのかは覚えていない。
気づいたら部屋の明かりはそれだけで、それはトリスが言ったことだが。
ろうそくの灯がゆらゆらと震えるのが瞳に映し出される。
灯された揺らめきはどこまでもやさしい。

「ね、綺麗でしょ」

「あぁ。トリスがこういうのを好むとは思わなかった」

「なによぅー」

ぷぅっと頬を膨らませて、そういうところはいつもと変わらない。
いつもと一緒でなければこっちまでがペースを狂わされそうだ。

「いいもん。どうせ子ども扱いするんでしょ」

「子供扱いして欲しくないのか?」

そう言ってふっと笑うとトリスは「へ?」と間抜けな声を出した。
ソファに傾ける肩を抱き寄せて、額にキスを落とす。

「にゃ、にゃにやってんのよー!」

ばかー!!と真っ赤な顔で瞳を潤ませて抗議をするもその手を取ってしまうと急に黙り込んだ。
子供なのか大人なのか、わからない。

「トリス」

「バカ・・・・・・」


その先の言葉は飲み込んで、手と手を重ねる。
今度は優しく口付けを交わした。
テーブルの上に灯るろうそくの灯を瞳の端に捕らえながら。






■聖なる夜に愛を込めて(フォルケイ)

もうすぐで日付が変わろうとしている。
そんな真夜中に窓の外を眺めながらケイナは外に降り積もる雪を見つめていた。
あの日から幾年も年を重ね、そうしてまた今宵も変わろうとしている。

「ケイナ」

「あら、ありがとう」

二つお揃いのカップを持って現れたフォルテに感謝の言葉を口にする。

「どういたしまして」

差し出されたカップを受け取ると少し紅茶の葉の香りが鼻をついた。
こくっと一口口に運ぶとそっとその唇を離す。

「明日、挨拶しに行くか」

「ええ。みんなのところにも行かなきゃね」

一つの答えを見つけた私たちはようやく手と手を取って歩き出すことを決めた。
フォルテはケイナを後ろから抱き寄せ、あごを肩の上に載せる。

「何やってるのよ」

「いいじゃんいいじゃん」

「バカ」

呆れながら一つため息をついてケイナは苦笑いを浮かべた。
こんな馬鹿なことをしていても頼れる相棒に変わりはない。
抱き寄せる腕がひどくやさしくて、ケイナは思わず泣きそうになる。

「ケイナ」

「うん?」

「              」

それはとてもやさしくて甘い言葉。
恥ずかしいってわかっているけれど、それも良いかなと思ってケイナもまた小さな声で呟いた。
静かに更ける夜に想いを込めて、抱きしめ返す腕に酔う。

大切な人。

なくしたくない人。

傍にいてと闇夜にケイナは願いを込めていた。





---------------------------------------------------------------------
おまけという名の裏側:
・ウィルアティ→あれですね、ウィルとアティが恋人同士になったその後ぐらいです。
 この二人初々しいと思うんですよねー、他のカプに比べたら、という感じかな。
・キーハヤ→こいつら意外と甘くて・・・(笑)特にキール相手だとこんな感じ。でも、
 結構楽しんで書いたと思う、私(笑)他のカプよりも甘いんじゃないかと思った私です。
・ソルナツ→この二人もバカップル。それこそ一番のバカップルだと自負できます(笑)
 何気にちゃんと攻めました、ソル。ナツミってある意味甘いからなー(隙ができやすい)
・ネストリ→この二人もバカップルですが何か?(笑)恋人同士になったその後です。
 少しはトリスが成長してくれたかな?って感じ。ネスティ苦労性です(爆笑)
・フォルケイ→この二人で締めだったので、甘くしてみました。やっと一緒になることを
 決意した後って感じ。リィンバウムってクリスマスなさそうだから、新年ってことで書きました。
---------------------------------------------------------------------
Christmas5のお題
From:  胡 蝶 の 夢
URL: http://hatune.finito.fc2.com/x-kotyou-enter.html
ブラウザで閉じてください。
template : A Moveable Feast