しとしとと降り始めてからかれこれ小一時間が経とうとしていた。
晴れていれば今頃茜色の空が広がっているはずの時間だが、窓の外に浮かぶのはどんよりと重い空だった。
じっと空を仰ぐのには理由がある。
自分の手に仕舞われているのは雨に祈りをささげるそれ。
「・・・・・・アンジェ、何度見ても同じだろ」
「わかっているわ。でも・・・・・・」
空に広がる暗闇は夜のそれとは違う。
言いよどむ少女に肩を竦めて読んでいた本を畳んだ。
「明日は晴れる。そう願ってそれを作ったんじゃないのか?」
「そうなのだけど・・・・・・」
一向に止みそうもない雨は少女の心に影を落とす。
「アンジェ、ほら」
手を差し出して少女の持つそれを載せるよう促した。
少女は上目遣いで見つめるとそっとその手に載せる。
「レイン、明日は晴れる?」
糸で窓のカーテンレールに括りつけているレインへと少女は問う。
「ああ。アンジェの願いは届くよ」
オレはそう信じてる、レインは言葉を付け加えると不安そうに見つめる少女――アンジェリークへと視線を向けた。
レインの一言に勇気づけられたのかアンジェリークはほっ、と息を吐いた。
そんなアンジェリークを見つめるとレインは華奢な腕を引っ張り、自分の傍へと寄せた。
「レイン?」
不思議そうな声を挙げるアンジェリークにレインは苦笑いを浮かべた。
きっとどんな表情をしていてもこの少女には敵うことはないんだろう。
世界でたった一人、大切な人。
「・・・・・・何でもない」
レインの言葉に小首を傾げながらもアンジェリークはその腕に抱かれる。
優しく、慈しむように包むその腕はアンジェリークにとっての幸せの仕草。
「変なレインね」
くす、と笑うアンジェリークにレインは小さく笑う。
「明日は出かけるんだろう? 準備はしなくて良いのか?」
「あ、そうだわ。準備しなくちゃ」
レインは名残惜しそうにアンジェリークを抱いていた腕を離した。
アンジェリークの興味はこのドアの外に向かっている。
「明日はとびきり美味しいアップルパイを焼くわ」
「楽しみにしてるよ、アンジェ」
「ええ!」
アンジェリークは笑みをこぼすと踵を返してドアの外へと駆けて行く。
レインはその後姿を見つめて微笑んだ。
「明日は頼むぞ、てるてる坊主」
明日の天気はてるてる坊主のみが知る。
終