旅立ち

その背中を見て思うことがある。





泣きたくなるくらいに、一度目は悲惨なもので。
もう、なくしたくない。
それだけが自分の心の中にあった。
死なないで、と。
そして、未来を見つめて、と――――。






未来は無数にある。
生きたいと願えば、見つけられるはず。
一緒に、その未来を歩めればと願う気持ちが溢れる。
やっと掴み始めた、その先の未来を二人で誓って。



「九郎さん、私、今すごく嬉しいの」


泣きたくなるくらい、嬉しい。
そう言うと、その腕が自分の首に絡まれた。



「バカ」



一言だけ呟く。その言葉に照れが隠されていて、何となくくすぐったかった。
こうやって一緒にいれることが、こんなにも嬉しいものだなんて。



「あっちの世界へ行きましょう。そうして一緒に未来を歩きたいんです」



きっぱりと告げると「俺もだ」と優しい笑みが返って来た。
手と手が互いを求め、掴むとぎゅっと握りしめる。
ここにいるということ。
もうなくさない、その幸せがここにある。


「俺は、お前の世界が見たい。―――望美、お前のことがもっと知りたいと思う」


「九郎さん・・・・・・」


絡み合う手と手が、互いの熱を奪うように。
一度めになかったそのぬくもり。
なかったはずの未来が自分の手によって開かれる歓び。


「ね、自分達で未来を切り開いていきましょう」


笑顔を向けて言葉を紡ぐ。


「あぁ、そうだな」


九郎の優しい笑みが返ってくる。
片方の手がその頬に触れて、「九郎さん」と呟いた。


「私がいるから、大丈夫」


力強く頷いてその澄んだ瞳の奥を見つめる。
その先にある未来を掴んだ今だから。



「あぁ、頼りにしてる」




ぎゅっと握りしめる手が、それを返すように。
握り返された手に託された想いを握りしめて、そっと笑った。




輝かしき未来は、すぐそこに。
旅立ちの時は、今この手の中にある。







*あとがき*
九郎は未来があるから好きです(きっぱり)
しかも現代ED。私、正直、現代に戻ってきた方が好きです。
というのも、あっちの家族はどうなるんだ?とか余計なことを思うからです。
や、あっちにいるのも好きなんだけどね。
家族が大事なのは私の中の根底にあるからでしょう、多分。