前々から気になっていることではあった。
こんなにも暑いのに、どうしてその黒いものを身に纏えるのか。
汗なんてかいているようにも見えないし、その涼しい顔が更に望美の中での疑問を広げる。
「・・・・・・・・・」
無言でその疑問をその背中に投げかけるもそれに対する答えはない。
暫くじっとその背中を見つめていると、気づいたのかこちらへと振り向いた。
振り向いた瞬間瞳と瞳が絡み合う。
逸らすなんてこと、できなかった。
「望美さん」
「は、はいっ? 何ですか、弁慶さん」
「僕の背中に何かついてるんでしょうか?」
「いや、そんなことは・・・・・・」
苦笑いを浮かべて答えるとそうですか?と小首を傾げる。
そしてまた何もなかったかのように涼しい顔をして九郎の元へと駆け寄ってなにやら難しい話を始めていた。
望美はその背中を視線でまた追いかけていた。
だから、どうしてそんなに暑苦しい格好していても涼しい顔をしていられるの?
望美の疑問は広がるばかり。
その謎を解こうにも、いざその言葉をするのは難しくて。
眉間に皺を寄せながらどうしようかと思っていた時だった。
あ、そうか。
望美の脳裏に浮かんだのはいたずらとも言える行為。
ちょっとした意外な顔も見てみたかった。
ちょうど運良く、弁慶が一人になり、望美はそっと後ろから近づく。
そうして頭から被っているその薄く黒い布を親指と人差し指で軽くつまんで降ろした。
「やった・・・!」
望美の喜びの声と同時にはらりと避けられた布から見せたのは少し振り向いた弁慶の驚いた顔。
疑問を聞くよりも先に意外な素顔が見れたことに望美は満足していて、その先を考えていなかった。
「・・・・・・何がやった、なんですか?」
にっこりと微笑んだ弁慶が振り向いた。
「え?」
「だから何が、やった、何ですか?」
そうしてゆっくりと確実に望美に近づく弁慶になにやら危機を覚えた望美が少しずつ後ろへと後ずさる。
身の危険を感じる・・・!
望美の脳裏にはその言葉しかなかった。
「あの・・・えと・・・・・・」
もう、あと数歩で望美と弁慶の間はほぼない状態まで近づいたその時。
弁慶の手が望美の頬に触れた。
「望美さん」
「は、はい・・・」
「あなたはいけない人ですね」
微笑んだまま触れている頬に熱が上昇する。
きっと顔は真っ赤、ゆでたこ状態だとわかっていた。
すり・・・と手が頬を撫でる。
そんな望美を楽しそうに見つめる弁慶の顔が望美の瞳から離れなかった。
当初の目的はどこか。
ちょっぴり芽生えたいたづら心に少し後悔する望美がいたとか。
この後がどうなったかは、二人しか知らない。
終