生まれてきたこと。
そうして出会ったこと。
この世に生を受けたことに感謝したい――――・・・・・・
どうしてかその話題になったことは覚えていない。
気づけば、その誕生日の話で盛り上がっていた。
「へぇ、望美の世界では皆で祝ってご馳走を食べるのね」
「うん。ごちそう食べたり、プレゼント・・・何かモノをあげて祝うの」
梶原家の軒先にて望美と朔が洗濯物を畳みながら話をする。
そこに現れたのは敦盛と弁慶だった。
「そんなことをするのですか?」
「うん。あ、弁慶さんはいつ生まれたんですか?」
「僕ですか? 僕は・・・如月、二月ですね」
「へぇ、二月」
そうして望美はちらりと敦盛へ視線を向ける。
敦盛はその意図がわかって、ぽつりと呟いた。
「私は、五月だ。五月二十八日」
「え?今日じゃないですか」
望美は声を挙げると敦盛を見つめる。
敦盛は困った顔をして、望美を見つめた。
「でも、私には必要のないことだ」
そう言って瞳を伏せて、望美はその意図がとれて少しだけバツの悪そうな顔をした。
誕生日は生を受けた日。
即ち、生きるていることが前提となる。
「そうだ!敦盛さん、今から出かけましょう♪」
「え?」
敦盛の間抜けな声が返ってくるよりも先に、望美は洗濯物を置いて敦盛を連れて出かけた。
その背中を見つめ、朔は呟く。
「いってらっしゃい」
くすりと笑った朔の笑顔を弁慶は見つめ、また微笑んでいた。
望美に連れられること数十分、京の少し外れまでやって来た。
望美にとって誰にも話したことのない場所。
「神子・・・・・・?」
そこには一面の花が敷き詰められていた。
白くてかわいらしい花が咲き誇る、花畑。
「男の人にはどうかなとも思ったんですけどね、でも良いでしょう?」
望美は笑って敦盛を見つめた。
「あぁ・・・・・・綺麗だ」
敦盛は感心したように言葉を口にする。
きっと敦盛だったら、と思って望美は連れてきた。
「はっぴーばーすでぃ、敦盛さん」
「はっぴ・・・・・・?」
困惑した顔で望美を見つめると、望美はくすくす笑って敦盛の手を取った。
「お誕生日おめでとうございます、って言う意味の言葉です」
「神子、私は・・・・・・」
「怨霊だって、今ここに生はないって言いたいんでしょう?」
先日告げられた言葉。
自分は怨霊だと、そう言った敦盛。
「関係ないです。だって、敦盛さんが生まれた日ですよ?」
すごく大事な日じゃないですか。
きっぱりと告げる言葉に面を食らったような顔をして敦盛は望美の瞳を見つめる。
「たとえ、怨霊でも、生まれてきたこと、それを祝うのは当然ですもん。
私、敦盛さんに出会えたことが嬉しいんです。だから、生まれてきてくれてありがとう、なの」
「神子・・・・・・」
敦盛はそれ以上の言葉が見つからず、ただただ望美を見つめていた。
まつ毛を伏せて、くすっと笑う。
「ありがとう、神子・・・・・・」
ありがとう、生まれてきてくれて。
ありがとう、この世に生を授かって。
出会えたことに、ありがとう、と言いたい。
『お誕生日おめでとう』
優しいあなたに、幸せが訪れますように―――――。
終