あなたに恋焦がれてやまないのはどうしてだろう。
遠い彼方から時空を超えて共にいることを選んだあの日。
それから数ヶ月の時が経った。
「――で、これはX=4、Y=1/3」
「あ、当たった。当たった」
お互いの数学の教科書とノートを睨めっこしながら赤ペンを持つ。
定期テストも近いことからため息をつきながらも苦手科目に目を移す。
「ホント、どうして男の人って数学に強いんだろ」
半分投げやりな顔で望美はため息をつきながら言葉を口にする。
驚いたことに時空を超えた際に少しの知識を与えられた敦盛はめきめきとその学力を伸ばした。
さすがの望美も同じスタートラインではないにしろ、その成長に目を見張る。
「将臣くんだって、譲くんだって何だかんだ言って数学得意だし」
敦盛さんだってできないとか言いながらできるし、と望美は文句の言葉を並べた。
さすがに敦盛も苦笑いを浮かべてその言葉を聞き流す。
「あー。勉強は苦手だー!」
「望美・・・・・・」
敦盛は苦笑いを浮かべたままシャープペンシルを走らせた。
達筆な文字がさらさらと白いノートに記されてゆく。
敦盛の様子を見ていた望美は文句を言いながらもまたシャープペンを手に持って問題を読み始める。
シャープペンが動き始め、ノートの上に次々と計算式と答えが記されてゆくのを見て敦盛は不思議だなと呟いた。
こんな穏やかな日がくるなど、誰が予想しただろう。
「あ、ここ」
間違っている、そうしてきしようと顔を少し前のめりにして言葉を口にしようとした。
するとあまりに顔が近づきすぎて、望美も敦盛も思わず言葉を失った。
近づきすぎる距離。吐息がかかり、鼻を掠めるシャンプーの香りが思考回路を麻痺させる。
二人とも黙ったままで、でもその沈黙は嫌じゃなくて。
不意に沸き起こった笑みを隠すことなくこぼす。
それが合図。
きっとちゃんとまじめに勉強しなさいとかそういう言葉は今の自分達に届く声はない。
幸せになりなさいと言った兄の言葉が不意に蘇って、敦盛はゆっくりと瞼を閉じた。
優しい口付けを交わすと、少しだけ頬に赤味を帯びさせていた二人の姿があったとか。
結局は誰にもわからないことだけど。
終