「ね、敦盛さんは知ってますか?」
望美はひょこっと雑誌の隙間から顔を覗かせると、敦盛は小首を傾げた。
「何を、だろうか?」
「青い色って幸せを呼ぶんです」
「幸せを?」
「はい」
にこにこと微笑みながら望美は更に言葉を続けた。
日本独自の習慣ではないが、ここ最近ほぼ誰もが知る事実となっている。
その例として名高いのは翌月に控えている6月、――ジューン・ブライドとしての季節でもあった。
「えっとですね、雑誌で書いてあるんですけど、ヨーロッパで200年以上も前より語り継がれている、
幸福な結婚のおまじない・・・4つの何か(Something 4)のひとつなんだそうです。
その中でも『サムシングブルー』とは、『二人の誠実な誓い・・・忠実、信頼、清らかさ、幸せ」を象徴してます。
また、青は古より女性の慎みと誠実、純潔を象徴する色であり、聖母マリアのシンボルカラーでもあります、って」
「そうなのか」
「はい。特に来月ってジューンブライド、6月の花嫁って言われてるんですけど、
幸せ結婚生活が出来るって言う話があるんです。
その結婚式の時に青いもの――つまりサムシングブルーをつけてるといいって」
そういう話があるんですよ、と望美はにこにこと笑って敦盛に答えた。
「こちらの世界は面白い話が多いな」
「そうですか?」
「あぁ。私がいた世界が小さかったのだと改めて思った」
敦盛の言葉に望美は小さくため息をつく。
仕方がないとわかってはいるものの、そんな顔をさせるためにこの話をしたんじゃない。
だって、私があなたの居場所になるって言ったんだから。
笑顔が見たかった、それだけ。
「と、言うわけで敦盛さん、お誕生日おめでとうございます」
ごそごそと隠し持っていた小さな包み紙を敦盛の前に差し出した。
「神子・・・・・・?」
「まぁ、この間家族で旅行に行ったのでお土産でもあるんですけど、これ見た時敦盛さんにぴったりだって思ったの」
敦盛は受け取った包み紙をそっと剥がして中身を取り出した。
そこにあったのは『青い砂』と『小さな横笛』だった。
「青い砂は『星の砂』って言うんです。青い色って本当なら女の人にとって、
なんですけど二人だけじゃずるいなって昔から思ってて、きれいだしいいかなって。
あと『横笛』なんですけど、小さいけどちゃんと音が出るので敦盛さんにぴったりだなって思ったんです」
「神子・・・・・すまない」
敦盛は深々と頭を下げて望美に言う。
「敦盛さん言葉が違いますよ」
くすくすと笑って望美は言い、敦盛は「あぁ、そうだな」と頷いた。
「・・・・・・ありがとう、神子」
「いーえ。どういたしまして」
緩やかに微笑んだ敦盛の顔を見つめて望美は目を細めた。
綻んだ顔を見ていると望美まで嬉しくなってくる。
喜んでくれて良かった、と望美は心から思っていた。
「神子」
「何ですか?」
「その、だな。・・・・・・私は一生涯、神子と共に幸せを築いていけたら、と思っている」
「敦盛・・・さん・・・・・・」
「・・・・・・構わないだろうか?」
恐る恐る口にする敦盛に望美は泣きそうな顔をして敦盛に抱きついた。
驚いたのはむしろ敦盛の方。
「み、神子?」
「そんなの、決まってるじゃないですか!・・・・・・私が言ったんだもん。あなたの居場所になるって」
「神子・・・・・・」
敦盛は望美を抱きしめ返して、まるで子供をあやすかのようにぽんぽんと望美の背中を叩いた。
その響きが心地よくて望美は泣きそうになる。
くすくすと望美は泣き笑いの顔をして敦盛を見つめていた。
「何か変なの。敦盛さんの誕生日なのに、逆に私がプレゼント貰ったみたい」
「そう、だろうか?」
「そうですよ」
絶対にね、と望美は言い加えてぎゅっと敦盛を抱きしめた。
心臓の音が直に伝わって、その音を聴いていて悪くないと思う。
今はまだできないけれど。
いつか、その言葉の通りになったらいいと願って、望美は瞳を閉じた。
敦盛はそっと柔らかな唇にキスを落とす。
Happy Birthday 敦盛さん。
そしていつか、二人で一緒に幸せになろうね。
望美の想いは敦盛へと繋がれてゆく――――。
終