弁朔拍手ログ

【1 桜の雨】



ぽたり、こぼれたのは桜の花びらの雫。

「・・・・・・風邪、引くわよ」

短い漆黒の髪の毛がゆっくりと揺れ、思わずその流れに目を奪われた。
短い布がふわりと舞って雫がこぼれると優しく包み込むようにその手が触れる。

「・・・そう、ですね・・・・・・」

「風邪なんて引いて、私に移さないでちょうだい」

小言のように呟くその唇をじっと見つめていると少女は訝しげな瞳を向けた。

「弁慶殿?」

少女の頬に自分の冷たい手が触れ、思わず少女はびくっと身体を頑なにする。

「朔殿は・・・・・・」

弁慶の言いかけた言葉に苦笑いを浮かべた少女は一つため息をついた。

「・・・・・・馬鹿ね、あなたは」

少女――朔は少し泣きそうな顔をすると首に自分の手を絡めて抱きしめる。
目を見開いた弁慶は瞳を瞬きさせると瞳を閉じて朔の背中に手を回した。
はらり、弁慶の頭についていた桜の花びらがこぼれ落ち、弁慶はそれをじっと見つめる。
桜のように散ってゆくだけではない、ちゃんと朔はここにいる。

「忘れないで」

朔の唇は言葉を綴る。それを返すように弁慶は強く抱きしめ、「そうですね」と呟いた。
桜の雨はまだ止まない。
花びらは静かに雨の雫に揺れながらこぼれ落ちていた。









*あとがき*
また何か増えたら掲載していきます。弁朔は何だかんだいってネタが豊富です。
まぁ、マイナーカプだからね。書く人も少ないしね(涙)