■Tea Time(将望)

この、ほのかな香りが一等好きでくんと鼻をつく。
ほっとするというか、何というか。

「本当に望美はこれを飲んでいる時、一番いい顔してるよな」

そう言ってくすくすと笑って、私を見て。

「そう?」

「あぁ、お前ホント好きだよな、昔から」

一言そう口にすると目の前にあるティーカップに口をつける。
美味いと顔でそう示して。

「美味しい?」

「あぁ、美味い。譲よりも上手くなったんじゃねーか?」

「ホント?」

「あぁ」

素っ気無く言いうけれど、でもそう言ってくれるのが嬉しくて。
だからめいいっぱい隠れて練習したのだけど。

「ありがと、将臣くん」

笑って言うと、将臣くんもまた笑って返してくれて。
そんな優しい時間が一番大好き。




■待ち合わせ5分前(ヒノ望)

人を待つって嫌いと友達が言っていたのを思い出してふと考え始める。
でも私は嫌いじゃないなぁと考えていると彼は現れた。

「お待たせ、姫君」

「ありがとうヒノエくん、迎えに来てくれて」

「姫君を一人で帰す訳にもいかないからね」

そういうとお互いくすっと微笑んだ。
朝から忙しかったヒノエくんの頼みで近くの市場へと足を運んでいた私は、
ヒノエくんからの伝言で買い物が終わったら社の入り口で待ってて欲しいと言われていた。
そのとおりじっと待っていること十分強。

「ねぇ、今日は何だと思う?」

「姫君の好物かい?」

「ぶーっ。残念。ヒノエくんの好物だよ♪」

「へぇ。それは楽しみだね」

「頑張りますとも」

お互いまた視線を交わすと笑みがこぼれる。
ヒノエくんの傍にいられること、それがこんなにも嬉しいだなんて、ヒノエくんは知らない。
いつだって私がピンチの時は助けに来てくれた。
そんなヒノエくんだからついていこうと思ったんだよ?

「今日はやけにご機嫌だね」

「そっかなー?」

「うん、えらくご機嫌だ」

「だったらそれは、ヒノエくんのせいだよ」

大好きな人の傍にいられる、満ちたりた想いがここにある。






■イチゴワッフル(譲望)

「うーん、美味しいv さっすが譲くん」

満面の笑みでその舌鼓に酔いしれて褒めた。
譲くんはそんな私を見て笑う。

「そう言ってもらえると頑張って作ったかいがありますよ」

くすくすと笑いながら紅茶のおかわりをカップに注ぐ。
最近色々と作ってくれるそのお菓子が私の何よりも楽しみで、幸せな気分になる。
大好きな人の手で作られてゆくそのお菓子を一人占めできる幸せ。
それがどれだけ嬉しいのか、譲くんは知らない。

「ホントおいしーいv」

「先輩、褒めすぎです」

苦笑いで譲るくんは言って、でも嘘じゃないから。

「大好き、譲くん」

「お菓子が、でしょ?」

もう、何で素直に受け取ってくれないのかな、全く。
眉間に皺を寄せてじっと譲くんを見つめた。

「お菓子も好きだけど、それを作り出す譲くんの手も、譲くんの気持ちも嬉しい」

「先輩・・・・・・」

「それに、先輩は無し、って言ったじゃない」

膨れた頬を見て譲くんは笑う。
敵わないな、ホントと呟くとティーカップを差し出して言の葉を口にした。

「どうぞ、望美」

甘い時間はまだ始まったばかり。




■心理テスト(弁望)

心理テストでその人の心のうちが解るとはよく言ったものだなと思う。
確かに本音はわかるようなきがするけれど、目の前にいる彼には通用しないような気がした。

「どうしたんです? 眉間に皺寄せて」

「え? あ、いやなんでもないんです」

慌てて頭を振ると不思議そうな顔で私を見つめていた。

「何でもないようには見えないんですけどね」

「気にしないでくださいっ」

「その態度が気になるんですが・・・・・・」

そんな目で見つめないでよと言えるものなら言いたいけれど、
それはまた無理な話とわかっているためか、うっと言葉に詰まった後に結局折れる羽目になる。
どうしたらそうやって人の心を揺らすのか。説明をするとへぇと納得したように呟く。

「面白いものがあるのですね」

「確かに面白いんですけどね。人の心の裏側がわかって」

「でしたら望美さんの心の裏側も見てみたいものですね」

「へっ?」

にっこりと笑って私を見て、その表情一つ一つに囚われる。
余裕のある笑みに少しばかり悔しい気がしないでもないけれど。

「だったらやってみますか?」

「ええ、是非」

答えなんて一つ。
だって、私はこんなにもあなたに囚われているから。
心理テストなんて私には必要ないとわかっていても、彼のその本音が知りたいと思うのは乙女心。

「では、いきますよ」

その先の答えは神のみぞ知る。






■アクセサリー(景望)

彼の器用な手先はするりするりと一つのものを成してゆく。
へぇぇと半ば感心した顔でその手つきに目を囚われていた。

「望美ちゃん、こんなんでどうかな?」

私が催促したものを器用な手先がそれを示す。

「わぁ、きれい。ありがとう、景時さん」

「いや、いいんだよ。喜んでくれるならいつでも作っちゃうからね」

貝殻などで作ったネックレス。
こういうのが私の世界にはあったのと言うと何か考え事をした後にじゃあと言って作り始めた。
私は隣でその様子を見入って、たまに朔が不思議そうにその様子を見に来ることもあった。

「景時さんって本当に器用〜。私じゃこうならないもの」

「ホント、喜んでくれるなら嬉しいからさ」

「ありがとう」

お礼の言葉を口にしながら私はそのネックレスを首に引っ掛ける。
しゃらんと貝が擦れる音がした。

「あ、ちょっと待って。今手伝うから」

そう言って私の長い髪の毛をたくし上げて、彼の手がネックレスの紐を結ぶ。
ちょっとした優しさがすごく嬉しくて、あたたかい気持ちがこみ上げていた。

「ありがとう、景時さん」

「お安い御用だよ〜。遠慮なく言ってね」

笑って彼は言って、私はその笑顔に答えて呟く。

「大好き、景時さん」

瞬間、彼の手が絡まって「あ、ごめんね」と謝る声が聞こえてきた。
そんな仕草もやさしさもちょっとだけ不器用なところも全部、大好き。




■十字路(朔+白龍+望美)


「さぁ、どっちに行く?」

「私は神子が選ぶ方ならどこでも構わない」

「あら、私も望美の行きたい方に行くわ」

「それじゃ拉致があかないんだってば」

二人の言い分を聞いたところで、やはり選ぶのは私なんだと認識する。
鎌倉で、少し外れの道に来てしまったがためにさ迷いこんだ。
朔も鎌倉には慣れていないし、白龍とてわかるわけがない。
私が知っている鎌倉じゃないから余計に道に迷う。
そうして結局はみんながどこにいるのかさっぱりわからなかった。

「神子、東の方角に九郎と景時と弁慶がいるよ」

「よっし、そっちに行こう!」

白龍のおかげでようやく道が決まる。
ほっと肩を撫で下ろして東の方へと歩み始める。
いつだって二人は一緒にいてくれる私の心強い味方。

「さーく」

「はい?」

「白龍」

「何、神子」

「大好きだよ、二人とも」

そう言って二人の腕を掴んで、朔はくすくすと笑うと白龍もまた笑った。
この二人と一緒にいる時の和やかな雰囲気が私の大好きな場所。




■午後の陽だまり(弁朔)

家の縁側はあまりにもあたたかくて思わずうとうとしてしまう。
ぼんやりと草や木、花を眺めながら瞳を庭に向けていた。

「朔殿」

「弁慶・・・殿」

「おや、眠そうですね」

「少しあたたかくて・・・」

苦笑いで答えるとあぁ、と頷く。
ひどく心地が良くて意識が飛びそうになるのを必死でこらえていた。
それがわかったのか、次の瞬間自分の身体が傾く。

「では、少しだけお休みなさい」

優しい声に頷いて、意識を彼に預けた。
ひどくやさしい心地よいあたたかな光が広がる。
どうしようもなくいとおしいぬくもりがそこにはあった。


ふっと意識が戻ったのはそれから一刻経った頃。

「え? ・・・私??」

膝の上に頭を預けていることに気づいてその上を見つめる。
すると瞳を閉じて寝入っている彼の顔がそこにはあった。

「・・・・・・何だか新鮮だわ」

小さな声は彼の耳には届かない。
気持ちよさそうな彼の顔を見つめ、もう一度瞳を閉じた。
どこか心地よいのはその膝の上だからだけじゃない。
きっと胸の奥にしまい込んだ想いがその答えを知っている。





■読書(リズ望)

ぱらりとめくられたページを見たところで私には理解できるはずがなく、
よくこんな難しいのを読むなぁーと半ば感心しながら視線は彼へと向ける。
そりゃあ高校生の私が見たところでわからないのはわかってはいるけれど。

「どうした?」

「ううん。何でもないです」

「・・・・・・そうか」

言葉少ないけれど、伝わるものがある。
椅子の後ろから思わず首に抱きついた。
ふさふさと髪の毛が頬に当たってくすぐったい。

「・・・・・・望美?」

「私、先生に名前で呼んでもらえるのすごく好き」

「そうか」

「はい」

ふふっと笑みを漏らして、ぎゅっと抱きしめて。
ずっと私だけを見つめてくれていた人。
自分のためだけに色々と犠牲にしてきたから、今度は私が。
あなたがもう苦しまないように。

「私は幸せ者です」

「それは私も同じだ」

いつだってその表情は見えない彼の本音を聞いてまた私は笑った。
求めるものはいつだってそばにあること、それが何よりの私の幸せ。




■街灯(九望)

いつの間にか辺りは闇の色に染まっていく。
茜色は闇の色に飲み込まれてゆくのをどこかぼんやりとした顔で見つめていた。

「どうした?」

私が黙ったのが不思議だったのか、小首を傾げて九郎さんは尋ねる。

「日が暮れるの早いなーって思って」

「そりゃあ冬だからな」

「そうなんですけどねー」

頷きながらもその瞳は闇の色を捉えて離さない。
いつか見た夕焼けも同じ色をしていたことを思い出す。
散々泣いたあの日と変わらない色合い。
どこかきゅっと胸が締め付けられるようなそんな気持ちが襲う。
ぽっかりと一つ、また一つと浮き上がる街灯を見つめ、それがどこかほっとした気分になって。

「ほら、望美」

九郎さんは手を差し出して私に促した。
私はその手の上に自分の手を重ねて、そのあたたかなぬくもりを再度認識する。

「ありがと、九郎さん」

「いや、それでいいのならいつでも構わない」

俄かに頬に朱が走り、それを見て私はたまらなく込み上げる思いを口にしたくなる。
きっとこれ以上に頬が赤くなることはわかっている。
でも、今はこれだけで十分だった。

ようやく掴んだ幸せ。

それを実感して望美は一人笑みをこぼしていた。




■アロマオイル(敦望)


つんと鼻をついたのは花の香り。
少し甘いくらいのにおいに思わず敦盛さんが瞳を細めていた。

「あ、気づきました?」

くすくすと笑ってその様子を見つめる。

「これ良い香りでしょ。アロマオイルっていうのやってみたんです」

「アロマオイル?」

「はい。アロマテラピーって言うの。香りで癒されるって言うか色々と効用があるんです」

「効用?」

「例えばリラックスするのにいいとか、ダイエットにいいとか」

「望美はダイエットをするのか?」

「え? あー、いや・・・その」

勢いよく突っ込こむ敦盛さんに思わずたじろぐ。
まさかそんな言葉に反応するなんて思ってもいなかった。

「きれいになりたいから・・・まぁ、多少は」

そういうと敦盛さんはそうかと呟くと小さな声で言葉を継いだ。

「望美は・・・・・・今のままでも十分綺麗だ」

言葉を告げると敦盛さんは少し前を歩く。照れてるのか否か、それは後姿からじゃわからない。
けれど、今の言葉は。
嬉しいけれど、やっぱり。

「好きな人のためにきれいになりたいってそう思うんだよ?」

敦盛さんの耳には届かない。
乙女心をその背中に向けて呟くと、制服の裾を翻してその腕を掴んだ。

微かに匂うのはローズマリーのほのかな香りだけだった。





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後書きという名の裏話:
初めてのカップリングの方が多かったかな?な感じで、こんなのこのカップリングじゃなーい!
と思われたらすみません(先に謝っておく人)全員で書いてみたいと思ったのが最初で、白龍は
なぜか書けずに朔と一緒の形となりました。あとは私の趣味で弁朔(笑)
ちなみに現代Ver.は将臣、譲、九郎、リズ先生、敦盛です。反対に遥かの世界で書いたのは、
ヒノエ、朔+白龍、景時、弁慶で、弁朔。十六夜記が終わっていないため、銀と知盛、泰衡は
お預けという形です。まぁ、10のお題だからある意味ちょうどいいかなーと。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいなと。
初書きだった将臣、白龍、ヒノエ、譲、リズ先生、景時はたどたどしく書いていたので、
自信ナッシングです(笑)
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日常お題10
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