::: おはよう :::

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つぐみと武の小話。
ネタバレです。その後の倉成家。




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A Moveable Feast
 
朝はいつだってやってくるものだと目覚ましよりも先に起きてしまった倉成武はそう思った。
隣ですやすやと小さな寝息を立てて寝ているつぐみを見るとつくづく思ってしまう。さらりと長い髪の毛を少しだけ手に絡め、幾本が流れるように落ちた。くすっと笑ってその寝顔を見つめる。
気づけば17年と言う歳月が流れていた。だから、自分の年齢は37歳となる。外見は20歳のまま。あの時のままだった。もともとつぐみが持っていたキュレイウィルスを胎内に投与し、自分もキャリアとなったわけだから、外見が特に衰えることもない。むしろホクトや沙羅の方が年をとっていくのだろうと思う。
「ん・・・・・・」
すやすやと寝ていたつぐみが小さな声を漏らした。つぐみはあまり朝には強くない。大抵自分が起きてから起こす。そして沙羅やホクトの弁当を作ったり、朝食を作るのだ。その間の自分の仕事と言えば特になく、最初はキッチンで手伝おうかとも思ったのに、それは簡単につぐみに却下された。黙って座ってテレビでも見てて、それがつぐみからの自分に与えられた仕事。
そろそろ目覚ましが鳴る時間。もう一分もない。窓の隙間から差し込める光がそれを示す。
ジリリリ・・・と突如大きな音が部屋の中を駆け巡った。「う・・・」と不機嫌そうな声が聞こえる。
「つぐみ、朝だぞ」
「うーん・・・・・・」
つぐみは眉間に皺を寄せて、また寝ようと試みる。それを阻止するべく耳元で囁いた。
「つぐみ、おはよう」
「え・・・? 武・・・?」
「おはよう、もう時間だぞ」
「あ、うん・・・・・・おはよ」
そう言って目をこすって必死で起きようとつぐみは手とかを動かしていた。
「おはよう、っていい言葉だよな。頑張ろうって言う気になるだろ?」
「うん、そうね・・・・・・」
「さぁ起きないと沙羅たちの方が先に起きてくるぞ」
「あ、うん」
そう言うとようやくつぐみは体を起こして伸びをした。そろそろ戦闘モード開始らしい。つぐみに倣って自分も起き上がる。軽く伸びをして、シャツを脱ぎ捨てた。改めてつぐみを見つめてあいさつをする。
「おはよう、つぐみ」
するとつぐみはくすっと笑って言葉を返す。
「おはよ、武」
それが一日の始まりの合図。



*あとがき
倉成家の朝です。正確に言えばつぐみと武の朝。私的な設定では3LDKのマンションに在住(事前に優春が手配していた)。武は再び大学へと通いだし、つぐみは近くのスーパーのパート、あとは政府などからの保証金で生活と言う形。沙羅とホクトはそのまま変わらず高校へ通っていると言う設定。
つぐみは朝に弱そうです。この家は男どもが早起きしてそうだ。