聖なる日に願いしは幸せを―――――。
「う〜〜〜〜寒いっ」
開口一番に私は外の空気の寒さに文句を呟いた。
マフラーして、暖かいコートを着て、手袋もしてるのに寒い。
もうすぐで夜の闇がやって来るそんな時間だから、余計に寒く感じる。
「ホント寒いね」
隣で和樹先輩も呟く。寒い、寒いって。
一週間とちょっと前は和樹先輩の誕生日だった。
で、今日はクリスマスイブ。
そして、終業式。
閑散とし始めた校舎の前には大きなクリスマスツリーが飾られていた。
はぁと息を吐いて手をあたためながらそのツリーを見上げる。
綺麗にデコレーションされて、今日はまた一段と輝いて見えた。
「きれい・・・・」
色とりどりに電飾がキラキラと輝く。少しだけロマンチックだなって思った。
「香穂ちゃん」
「はい?」
「メリークリスマスっ!」
そう言って小さな箱を取り出して私の手にぽんとのせた。
「え? いいんですか?」
「うん。見てみて」
くすくす笑いながら和樹先輩は私を見つめて、私は少し照れながらその箱の包みを開け始めた。
こうやって包みを開ける瞬間ってすごくドキドキする。
わくわくしながらリボンをとき、小さな箱を開けるとヴァイオリンのブローチが入っていた。
「これ見つけた時、『あ、絶対に香穂ちゃんに似合う』って思ったんだー」
へへっと笑いながら幾分か照れた笑みを浮かべて和樹先輩は言った。
「ありがとうございます」
「喜んでもらえたなら嬉しいよ、俺」
「ホント、すごく嬉しい」
きらきらと金色に光るブローチを手のひらで撫でる。
私のために買ってくれたということが嬉しかった。
「先輩」
「うん?」
「私からも、メリークリスマスv」
「え?ホント?」
そう言って手に持っていた袋を手渡した。
がさごそと音を立てて和樹先輩はその袋の中身を取り出す。
赤とは言っても少しワインレッドが入ったような色の毛糸を見つけた時から、絶対に編むと決めていた。
ぐるぐると巻けるマフラーを取り出して、和樹先輩が「これ、手作り?」と尋ねる。
「はい。ちょっと網目とか粗いですけど」
苦笑いを浮かべて呟いた。
本当はもっときれいに作りたかったけれど、何分そんな器用さは持ち合わせてない。
だから、十月の末からずっと編み始めて、途中でお姉ちゃんとかお母さんが茶々を入れてきたけれど。
自分で編みたかったから。
「すっげー。おれ、すごく嬉しい!」
そう言って和樹先輩は手にマフラーを持ったまま私に抱きついた。
先輩、まだ人がいるんですけど。
そう言おうかと思ったけれど、今日はクリスマスイブ。それぐらい見逃して下さい。
「ありがと」
小さな声で和樹先輩が耳元で囁いて、私は「いいの、あげたかったの」と返した。
少しだけ和樹先輩が離れて、お互いの視線が絡み合う。
くすっと笑ったのが合図。
近づく顔に、私はそっと瞳を閉じた。
重なる唇、バックにはきらきらと輝くクリスマスツリー。
軽く触れ、離れると私は笑いながら先輩の顔を覗き込む。
「男のロマン?」
「うん、男のロマン」
そう言いながら和樹先輩もくすくすと笑っていた。
「帰ろうか」
「うん」
二人でクリスマスツリーをバックに歩き始める。
街中がクリスマス一色に染まり、私達はその中を手を繋いで歩いた。
寒いはずの身体があたたかくなっていく。
それは、和樹先輩が手を握ってくれているから。
「香穂ちゃん」
「はい」
「大好き」
さらりと流すように呟くそれに、私は顔から火が出るほど熱くなった。
いつだって和樹先輩には敵わない。
「私も和樹先輩のこと、大好き」
ぎゅっと握りしめるそれが答え――――。
終