■光の狭間で(志水×日野)
あ、音の光だと思った時には全てが輝いていた。


アヴェ・マリアかなぁ、ぼんやりとした頭でそんなことを考えながら閉じていた瞼を開くと、そこは白かった。
眩しさで開きかけたはずの瞳が細くなり、ようやく光に慣れるとゆっくりと開く。
世界が白く見えたのには理由がある。
公園のベンチでいつの間にか寝ていたのか一番最初に目に入ったのは太陽の眩しい光だったからだ。
志水は小首を傾げて自分の置かれてる状況を把握しようとした時、声が降って来た。

「あ、志水くん、起きた?」

その声は紛れもなくやさしい声。志水が今一番心地よく思う声音。

「香穂・・・先輩・・・・・・?」

「勝手かなぁって思ったんだけど、ふらふらしてる志水くん見てたら放っておけなくて」

その言葉の意味が漸く理解できたのは香穂子の顔が志水の頭の上から見えたから。
膝枕されていたことに気づいたのは頭にあたたかいぬくもりを感じたためだった。

「迷惑だよね、ごめんね」

苦笑い。香穂子はこぼして、志水は首を横に振る。
むしろ、それは。

「迷惑では・・・ないです」

「そ、そう?」

「はい。すごく気持ちよかったし・・・・・・それに音が聞こえました」

「音?」

「はい・・・・・・光と一緒に、音が」

志水の言葉に香穂子はああと頷き、笑っていた。

「多分私が歌ってたからかな。譜面見ながら声に出して読んでたような気がする」

眠り、妨げちゃったね、そういって香穂子がすまなさそうに謝る姿を志水はじっと見つめる。
むしろ、それは。

「心地、良かったです」

「ホント? 迷惑じゃなかった?」

はい、と頷いて志水は微笑む。光の音が降っていたのが見えたのはとても気持ちが良かった。
願わくばもう少しそれを見ていたいと願う。
だから。

「・・・・・・もう少し、こうしててもいいですか?」

志水の願いに香穂子は微笑み返した。
それが、答え。
志水は瞼を閉じてまた光の世界を求め、香穂子は志水の寝顔を見ながら音を奏でた。
二人の幸せなひととき。やさしい時間はここにある。




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