■パートナー(日野+森)

「そう言えば、どうして森さんは私の演奏引き受けてくれたの?」

第三セレクションの半ば、香穂子は練習の合間の休憩で、ふと思い出したことを口にした。

「え?」

「だって、普通科の生徒の伴奏って引き受けたがらないじゃない?」

どうしてかなって、香穂子の口が滑るように言葉を並べていく。
香穂子の疑問にしばし考えていた森の口からそうだね、と物腰柔らかな声がこぼれ落ちた。

「私は・・・最初金澤先生に言われたのもあったけれど、第一セレクションの音かな」

「音?」

「うん。いい音だなって思ったの。こういう解釈ができる人の演奏なら悪くないかなーって」

「そうなんだ・・・・・・」

まさかそんなところで評価してもらえてるとは思っていなかったためか、俄かに照れてしまうなと香穂子は思う。
あの時はぼろぼろだったのに、それでも評価してもらえるとは思っていなかった。

「音楽科だから、普通科だからって線が引かれてた部分があるじゃない? 
でもこれって本当はすごく勿体ないんじゃないかって思ったの。だから日野さんの演奏受けようって思ったんだ」

もっと音に触れてみたい、この人の可能性を見て見たいとあの時の森はそう思っていた。
日に日によくなる人を見ているのは面白いと思う。
そう言う人がいて、私の演奏が引っ張られていくのはいいなと森は思っていた。

「あと少しだから頑張ろうね」

「うん。よろしくね、森さん」

森の笑顔と、香穂子の笑顔と。
二人の小さな絆は確かにあって、よきパートナーを得られたことに満足していた。
第三セレクション間近、そんな練習のヒトコマ。



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