それは、突然の


それは突然起きた嵐のよう。
がつんと頭が殴られたような衝撃を面と向かって言われた香穂子は、一瞬何が起きたのかわからず、瞬きを繰り返した。

「え?」

「星奏って大したことないんだなって、それだけ」

あっさりと言ってのけた言葉に怒りを通り越して、呆気に取られていた。
何でそんなことを言われなければならないのかもわからなかったし、何よりもそういわせてしまった自分の演奏に悔しさを滲ませる。
ぎゅっとヴァイオリンを握る手に汗がじわりと滲んでいた。
喉が急に渇きを覚え、からからと鳴る。

「それだけ、って・・・・・・」

「あ、時間だ。じゃあ俺行くから」

そう言って去る背中を香穂子はじっと見つめる。
息苦しかった息が、彼が去った後で急に通りが良くなるのを感じていた。
は、と息を吐くと息と共に悔しさが吐き出される。

「何なの・・・・・・」

言うだけ言われて、何も言い返せなくて。
悔しいけれど、確かにその通りだと言うことは嫌と言うほど自分でわかっていた。
見慣れぬ私服姿の少年。はっきりとした物言いは遠慮を知らない。
(そういえば見たこと無い顔だったな)
香穂子は練習室から夕焼けに染まる木々を見つめていた。
あの少年の顔を思い出しながら、瞳を閉じ、ゆっくりと瞳を開く。

このまま言われっぱなしでは悔しいと香穂子は思っていた。
だが、少年がどこにいるのかもわからない。
もし何かの機会に会うことがあればその時は、その時はもう一度同じ曲を聴いて欲しいと思った。
今の自分とは違う音になっていたい、そう思って毎日練習している自分だから。

「頑張らなきゃ」

コンサートを聴きに来る人全ての人に聞いてもらえるように。
そしてあの少年が聞いた時にどんな反応をするのか、不安でもあり、楽しみでもあるそれを胸に刻んで香穂子は譜面を見返した。


嵐のような少年、それが衛藤桐也との出会い。
それから暫くして彼と出会うことになろうとは今の日野からは想像つくはずもなかった。
静かに時はその時をゆっくりと待っている―――。





あとがき
出会いを描いてみました。まぁ、萌えのままに描いたので変なところがあるかも。
衛藤は難しいなぁ、なかなか。