「色気でもついたか?」
くすっと笑みが漏れたのを耳元で感じ、思わず振り返る。
相変わらずぼさっとしてるようななりで、軽くシャツを羽織っていた。
「なに。そんなに私がおしゃれするの変?」
「そうは言ってないが」
「何か含みがあるように感じるんだよねぇ」
「どういう意味だよ」
「べっつにー」
ぷぅっと頬を膨らませた後、また目の前の作業に戻る。
艶やかなオレンジ色のマニキュアを足の爪に丁寧に塗っていた。
明るい色が似合うな、と一言だけ呟いたあの日以来、買うものはやっぱり明るめの色のもの。自分の好みでもあるけれど、とりわけ明るいオレンジ色は気に入っていた。
だから、ためしに買ってみた、それだけのこと。
「どこか行くのか?」
その問いにんーと言いながらまだ足の爪を塗りながら答える。
「またパジャマパーティーしよってことになったの。で、その前に買い物も行こうって言ってね」
「へぇ。メンバーは日野と冬海か?」
「うん。今度は香穂の家でって」
「楽しいか?」
「うん。前は香穂のヴァイオリンロマンスを聞きまくっちゃったからね」
「あー・・・・・・日野のね。相手は火原か」
「ん。面白かったよー。で、今度は冬海ちゃん。何か彼氏いるっぽいんだよねー」
「へぇ。それはそれは」
くっくっと笑いながら彼は言う。
楽しそうに笑みをこぼすのを背中で感じていた。
こういう時の反応は大抵何か知っているって言うコトを私は最近気づいた。
「金やん、知ってるの?」
「まぁ・・・・・・知ってるって言うか。見ちまったというか」
「ふーん・・・・・・」
「そうか。時間の問題だな・・・・・・まぁ、相手を知ってもあまり突っ込むなよ」
「何。突っ込んだらやばいわけ?」
「やばいというか、そうだな・・・・・・少なくてもお前にとっては聞きにくい相手かもしれないな」
「?」
「まぁ、その日まで楽しみにしてろ」
「? うん」
何か含みのある言葉を残して彼は座っていた椅子から立ち上がる。
「できたっと」
そう言うと背後からひょいと顔を覗かせて「へぇ」と呟いた。
「きれい?」
「まぁ、そうだな。似合う」
「ありがと」
へへっと笑うとその大きな手で頭をくしゃっと撫でた。
あたたかなぬくもりを残してそっと手は離れる。
短いけれど、その言葉は何よりも嬉しくて。
手放したくない、手放せない、そんな確かなものを噛みしめる。
何となくだけど、やっぱりこうやって会話をしている時が好き。
終