薄暗い部屋に一筋の光が差し込める。
その光に反応して思わず眉を潜めた火原は目をごしごしと擦った。
バイクの音や鳥のさえずりが耳の奥をくすぐり、そこでようやく朝が来たのだということを実感する。
「うーん・・・・・・」
ごそごそと火原は身体を動かすと、隣で寝ている香穂子に気づいて動くのをやめた。
あぁ、そうか。昨日泊まったんだっけ。
大学に入ってからバイトしてお金貯めて。
そうして一人暮らしをし始めた火原を心配して香穂子が来た。
夕食はオムライスを作ってもらい、美味しかったなぁと火原は一人ごちる。
何よりもこうやって香穂子が隣にいることが一番嬉しかった。
ねぇ、香穂ちゃん。おれ、幸せものだよ?
まだ寝入っている香穂子の頬に火原の人差し指が触れた。
そうしてようやく香穂子は「う・・・・・・」という声と共に瞳をうっすらと開け始めた。
「起きた?」
火原の問いに小さく頷く。
「今、何時・・・・・・?」
「5時55分。まだ寝れるよ? どうする?」
「うーん・・・・・・どうしよ・・・・・・」
まだ眠いせいか香穂子の反応は鈍い。
火原はくすくす笑いながら香穂子の頬や額にキスを落としていく。
「和樹先輩・・・・・・?」
「あれ、『和樹』って呼んでくれないの?」
昨日は結構呼んで貰ったのになぁとぼやくと香穂子は「バカ」と一言呟く。
「もー、和樹先輩のバカバカ」
そう言っていると火原は香穂子の鎖骨にキスを落とした。
「ちょっ・・・・・・和樹先輩!」
「あ、起きた?」
あははと笑って火原は香穂子の顔を覗き込む。
真っ赤な顔をして布団の中に顔を隠そうとした香穂子を火原が阻止する。
「ダーメ。かわいー、香穂ちゃん」
「もぅ、はずかしい〜〜〜」
見ないでと香穂子は顔を横に向けてしまった。
少しやりすぎたかなと火原は思い、そろそろ起きるかと上半身を起こす。
「起きるの・・・?」
「うん。ジョギングしてこよっかな」
「元気なんだから・・・・・・」
苦笑いを浮かべて香穂子は火原を見つめると、うんと火原は頷いてベッドサイドに座った。
「香穂ちゃんは寝てなよ。昨日はちょっと無理させちゃったし」
苦笑いが返って来て香穂子もだるそうな身体を動かした。
「じゃあ、私待ってる。ご飯、何がいい?」
「んー、米と味噌汁」
「わかった」
火原は着替え終えたのかジャージ姿を香穂子に見せると「じゃあ行ってくる」と一言残して外へと駆け出した。
そんな火原の後姿を見つめたまま、香穂子はくすっと笑みをこぼす。
いつか、こう言う場面が普通の日常になるかもしれない。
そう思ったら何だかくすぐったい気持ちになって、また笑った。
火原もまた同じことを考える。
こうやって朝隣に香穂子がいて、暖かいご飯が待ってて。
守るべき存在がそこにいるというのはすごく幸せなんだということを実感する。
好きなことをするには楽しさだけじゃないということを知った。
でも、それでも頑張れるのは香穂子と言う存在があればこそだ。
よーっし頑張って走るか。
暖かいご飯が出来上がる頃を見計らって帰ろうと火原は思って地を駆ける。
朝日が大分昇ってきたのに気付いて、目を細めて幸せを噛みしめていた。
終