「で、どうなのよ?」
急に現れた天羽菜美に私は頭痛を覚えて黙り込んだ。
そもそも事の発端は部室での会話だったらしい。菜美の後輩に付き合ってる子がいるらしいが、その子が突然「別れる」と言い出したのだ。
この間まで随分とお熱いお惚気を聞いていたはずなのに、と菜美は呆れたのだと言う。
どうせなら他の人はどうなんだろうか、そう思ったため、一番身近で付き合ってる人間と言えば私だったそうだ。
で、放課後の練習室、なぜか菜美と私と、私の演奏に付き合ってくれていた森さんと、菜美にばったり出くわした笙子ちゃんが頭を突きつける形になったのだった。
白と黒の制服がちょうど良い形で混ざり合う。
それが微妙にピアノの鍵盤に似てるなぁとどこか別なことを考える私がいた。
「別れるって思ったか、でしょ?」
「そ。正直な話、そんな簡単には別れるって言うことにはならないじゃない? ただ何がきっかけでそんなことを思うのかなぁと」
菜美の質問に逆に返したのは森さんだった。
「じゃあ訊くけど、これだけは許せない、っていうのってない?」
「許せないこと?」
「そう。その部分を見たらけじめをつけちゃう人はつけちゃうんじゃないかなぁ?」
「あー、なるほどね。ふむ、そうなの? 香穂」
急に私に話を振った菜美に私は慌てる。
「うーん。そうかもしれないけど、でも私は今のところないよ?」
「あんたがたって年中花咲いてそうだよね」
「はぁ?」
菜美の言っていることがわからず、香穂子は思わず声を挙げた。
「つまりバカップル」
ぼそりと森さんは言う。
「ちょ、それどういうことよ」
「あんた達ぐらいよ、誰の目も気にしてなさそうなカップルは」
「そ、それは和樹先輩のせいもあるもん!」
「まぁね、確かにそうだけど。あんた幸せそうな顔してるよ?」
「えぇー!?」
思わず顔をぺちぺちと叩いていると、菜美は肩を透かせた。
そんなこと言われても仕方ないじゃない。
「いいなぁー。私も彼氏が欲しい」
「何、森さんは音楽科の生徒と普通科の生徒どっちが好み?」
「好みは特にないかな。ただ音楽科の生徒はある意味堅物ばかりで嫌だなぁ」
「ははは・・・・・・」
私は森さんが指す言葉の意味がわかって苦笑いを浮かべる。
確かに気難しい奴多いもんなぁと学内コンクールのメンバーを思い浮かべた。
「そうだ。黙ってる笙子ちゃんは好きな人いないの?」
思い出したように話を振られた笙子は逆に顔を真っ赤にする。
「あ、いるな、その顔は。誰よ? 音楽科? 普通科?」
「えー!? いるの? 誰?」
「え? あ、あの・・・・・・」
今にも泣き出しそうな笙子ちゃんに慌てて私が制した。
「ちょ、菜美。泣きそうだからやめなよ」
「あ、ごめんごめん。つい」
ぺろりと舌を出して菜美は謝る。森さんも「ごめんね」と謝った。
「あー、恋がしたいなぁ」
「それは同感」
二人の呟きに私も笙子ちゃんも困った顔をして笑っていた。
―――命短し、恋せよ乙女!
終