07. 拍手ログ

【03 足元に注意(水日)】



「あ・・・・・・・」

一言を呟いたと思ったら、ぐらりと視界が揺らいだ。
落ちる、そう思った時ふわりとその手が差し伸べられるのが見えた。

「・・・と、大丈夫ですか? 香穂先輩」

「あ・・・・・・だ、大丈夫・・・」

みたい、とその腕で抱えられながら私は答えた。
思ったよりもがっしりとした腕が私を支えていて、妙に緊張感が生まれる。

男の人、なんだよね・・・・・・。

一つ下の後輩。
普段はそんなに重いものとか持つようなイメージはなくて、
見た目のせいもあるけれど、どこかで『男の人』と言う枠から外していたのかもしれない。
だから、余計に緊張してドキドキが止まらなかった。

「ぼうっとしてるからですよ」

「あの、それは志水君には言われたくないんだけど」

苦笑いをすると「そうですね」と彼自身も頷く。
って、自分で頷いちゃって良いわけと問うたところで彼の見解が変わるわけがないのは良く知っていた。
けれど、この格好はひどく緊張感が解けない。
どうしようと思うけれど、この腕が妙に安心できて私自身この腕を離すのは憚られた。
この腕であの音色を奏でているのかと思うとまた不思議な感じがするけれど。

「香穂先輩?」

彼の問いかけに私は「な、何?」とどもりながら答える。
どうしよう、熱が上がる。
体温が上昇するのがわかる。
持て余しそうな感情を抑えて、今はまだ笑顔で答える。

「なんでもないよ、志水くん」

気づかないふりをして、いつか気づく気持ちに背を向けた。
まだ気づかないで、このままでいたいから。
わがままな想いを伝えられるほど私にはまだ勇気はなかった。



*初挑戦水日でした(ドキドキ)




【5.花とリボン(王日)】(花とセットで贈る5のお題



花とリボンを添えて、あなたに会いに行くよ

『私、ガーベラの花束好きなんです。あ、スプレーバラも。かわいいでしょ?』

何気ない会話の中の一言、王崎の耳に残っていた言葉。
日野の誕生日がもう間近に迫っている時、花屋が王崎の目に映る。
いつだって顔を綻ばせ、目を細めて自分の名を呼ぶ日野の顔が目に浮かぶようで。
日野香穂子、王崎が初めて彼女だけのために弾きたいと思った人。
それまではたくさんの人が笑顔になってくれることを祈っていたのに、
今ではその願いの上に必ず彼女の名前が挙がる。
そんな自分がいたのかとある意味驚いてしまったのも事実だった。

すいません、と花屋の店員にお願いした花束を抱えて王崎は日野の家の前に辿り着く。
日野はどんな顔をするのだろう、そう思ったら妙な緊張が王崎を包んでいた。
ピンポーンと鳴るチャイムの音。それと同時にそれに答えたのは日野香穂子。
ごめんね、突然と謝りを入れ、渡したいものがあると言うと日野は快く頷いた。

「王崎先輩!」

ドアが開くと同時に現れた日野の姿は可愛らしく、王崎の瞳が自然と緩む。

「遅くにごめんね。君にどうしてもこれを渡したくて」

そう言って自分の背に隠していた物を日野に手渡した。
そこにあったのはピンク色のガーベラと色とりどりのスプレーバラとかすみ草。
日野は一瞬目を見開くとすぐに細めた。

「ありがとう、ございます。王崎先輩」

「ハッピーバースディ、香穂子ちゃん」

ああ、とそこで日野は自分が誕生日だったことに気づいた。
だから、この花、と日野は頷く。

「いつも素敵な音色をありがとう」

王崎の言葉に香穂子は破顔し、花束に顔を埋め、首を横に振った。

「むしろいつも私の音を聴いてくれて・・・ありがとう、ございます」

素敵な音色を貰っているのは自分も同じなのだと日野は言った。
王崎の音色は優しく、日野がこうしたい、と思う音を持っている。
それは王崎も同じだった。
日野の音はどこか心地よく、優しくなれる音。

君の音に恋焦がれる。
君の傍にいたいと願う。


だから、このお気に入りの花束と一緒に届けよう。
リボンを添えて、君に渡すよ。







*読んで頂きありがとうございました!