22. 拍手ログ

【恋の攻防戦(火日)】(安心できる5題



「これ、どっちが良いかなぁ」

ワンピースをじっと見つめて悩む香穂子に火原は苦笑いを浮かべた。

「香穂ちゃんならどっちも似合うと思うけど」

「それじゃ答えになってないんですー」

香穂子は口を尖らせながら答え、火原は肩を竦めた。
休日、しかも天気の良い日に火原と香穂子は街へ繰り出す。
バーゲンやっているからと香穂子に連れられて行った先は人ごみで溢れ返っていた。

「この色だとあれには似合わないし、だからと言ってこっちにするとあのコートに合わないし」

ぶつぶつと呟く香穂子に火原は香穂子の答えが出るまで待とうと決めた。
こうなると長いのは火原もよくわかっている。

「うーん、やっぱりこっちにしようかな」

「良いんじゃない? この白のラインかわいいし」

「あ、やっぱりそう思います?」

「うん。それにさ、香穂ちゃんの持ってるコートにも似合うよ」

さらりと口にした火原の言葉に香穂子は言葉を詰まらせた。
くす、と笑って火原はだってさ、と言葉を続ける。

「香穂ちゃんのことならわかるよ。だって、香穂ちゃんが真剣に悩んで一緒に買いに行ったでしょ、コート」

「和樹先輩・・・・・・」

「それに似合うのを決めてたんだよね?」

「なんで・・・・・・」

「だって、香穂ちゃんがこういうところに行きたいって言ってる時はそういうことが多いもん。いつものことだよ」

当たり前のように口にする火原に香穂子は思わず抱きつく。
周りの人達がぎょっと目を開いて二人を見つめ、火原は慌てた。

「香穂ちゃん?」

「―――大好き、和樹先輩」

「・・・・・・知ってるよ。おれ、香穂ちゃんのこと大好きだから」

ね、と笑う火原に香穂子は敵わないと肩を透かした。
いつも香穂子の一枚上手を取る火原には一生敵わない。

「ずるいなぁ、もう」

香穂子は小さく笑うとじゃあ行ってきます、と言って火原を残し、レジへと向かった。
火原は小さなため息と共に笑みを浮かべる。

香穂子のことをわかってるって言うのは香穂子のことをいつも見ているから。
香穂子のことを考えて、何をしたいのかを知りたくて、焦っていた時もあったけれど。
いつの間にかなんとなく香穂子の考えることがわかるようになったのは、きっと随分と一緒にいたせい。

「ずるいのは香穂ちゃんなんだよ」

いつも火原の考えもしないことを口にして、火原を驚かせるから。
せめて、こういう時だけはと火原は思っていた。


―――恋の攻防戦、どちらが勝者?






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