だからほっとけない


少し抜けていて、でも気になる、そんな彼女が僕の彼女だった。


「あ、ハルくん。これすっごくきれい!」

「それは翡翠ですね。こっちは紫水晶」

「じゃあこれは?」

「月長石です。俗に言うムーンストーンですよ」

「すごいなぁ、ハルくん。いろんなこと知ってるね」

「たまたまですよ。石には昔から色んな力が宿ると言われていましたから」

百科事典を読んだりするのは比較的好きだったため、悠人の頭の中には様々な知識が張り巡らされている。
近くで石の展示会があるということでかなでを誘ったのだが、思いのほか喜んでくれたらしく、楽しそうに石を見ていた。
まだ宝石になる前の原石。かなでの瞳はきらきらと輝いている。その横顔を見つめながら悠人は頬を緩めた。

「以前僕がビー玉をどうするか困っていた時楽しそうに眺めていたから、もしかしてこういうのが好きなんじゃないかって思ったんですけど、やっぱり大当たりでしたね」

「うん。キラキラしたもの大好きなんだ。ありがとう、ハルくん」

「いいえ。かなで先輩が喜んでくれたのならそれでいいんです」

それが一番満足なんですから、微笑みながら言う悠人にかなでの心は奪われる。
そんな表情されたら簡単に心を鷲掴みされちゃうよ、と口の中で呟きながらかなでの心は揺れ動いた。

「ハルくん、下の階にもあるみたいだから行こう!」

早く早く、と駆け出したかなでに倣うように悠人も駆け出した。
かなでは楽しそうに悠人を呼び、どうしようもないなぁと苦笑いを浮かべる。かなでの無邪気な顔に少しだけ油断をしていたのかもしれない。
階段を駆け下りようとかなでが足を踏み入れた瞬間だった。

「きゃっ・・・・・・!」

バランスが崩れたかなでを見つけ、悠人は思わず手を伸ばす。
伸ばした手が掴んだのはかなでの腕で、かなでの腕を引っ張り、悠人の胸に抱き寄せた。
勢いが良かったためか、斜め後ろにあった壁によろり、ぶつかるとそのまま座り込む。
思わずうっと顔を顰めた悠人は床に座り込んだまま、かなでを抱きしめて小さく息を吐いた。
ふぅ、とため息を吐くと悠人は抱きしめた腕の力を緩めかなでを見遣ると、かなでは不安そうな眼差しで悠人を見上げる。

「ごめん、なさい」

「いいですよ。かなで先輩に怪我がないなら、それで」

かなでがおっちょこちょいなのはいつものこと。目が離せないのもいつものことだ。
だから悠人は付き合う時に決めていた。何が何でもかなでを守ると。
ちゃんと守れたことに悠人はほっとしたのだった。これで守れなかったとなれば、そっちの方が悔しい。

「でも、今背中打ったでしょ?・・・・・・痛くない?」

「まぁ、多少は痛いですけどこれくらいは平気です。かなで先輩こそ、痛いところはありませんか?」

「私は平気だよ。ハルくんが守ってくれたから。ハルくんの大きな腕が守ってくれたから」

だからごめんね、そう呟くかなでに悠人はぽんぽん、と軽く背中を叩く。まるで子供をあやすように悠人はゆっくりとかなでの背中を叩いた。

「僕は男だから平気です。・・・好きな人ぐらい守れないのはいやですから」

はっきりと告げた悠人の言葉にかなでは泣きそうになる。嬉しいのと自分の不甲斐なさと、両方の気持ちが入り混じってくしゃりと顔を崩した。
ごめんね、呟くかなでの言葉に悠人は小さく息を吐く。

「そんな顔しないで下さい。僕はあなたが元気ならそれで良いんです」

だから笑ってと言う悠人にかなでは小さく笑って返す。
ありがとう、言葉を紡ぐとやさしい音と共にこぼれ落ちた。


だからやっぱりほっとけない人。
目が離せない人。
優しくて愛しい人。


それが、僕の彼女。





*あとがき*
僕の彼女紹介します、的な話になっちゃいました。当初はこんな予定なかったのに(笑)。
ハルくんの男前さにはいつも惚れ惚れします。配信イベントも相変わらず良かったし♪
石が好きと言う設定は勝手に作っちゃいましたが、案外好きかなと思って選びました。すいません。
まぁ、石が好きなのは私のほうですが(苦笑)。でもハルちゃんならそういうの詳しそうだなぁと思ったのもあったんですよね。で、選んでみた次第です。
ベタな王道路線の話になっちゃいました(そして抱きつく、抱き寄せるが多いかも)。
この作品のタイトルはシュガーロマンスさんから頂きました。