おわり、そして始まる時
戦いは終わった。そして今、私たちの平和は始まったばかり。
「一騎くん」
ひょいと顔を覗かせると、一騎はベッドの上でぼーっとしていたようだった。
私の声に反応してこちらを向く。
「遠見」
「どう?何か困ったこととかある?」
「いや、特にない」
「そっか。それならいいけど」
私は小さく頷くと、ベッドの傍のイスに座る。
すると一騎くんは気をつかってか、そこの棚にお菓子があるから食べて良いよと言っていた。
「じゃあ遠慮なく」
「あぁ、食べてくれると助かる」
くすくす笑って一騎くんが言った。私もつられて笑う。
「今日もね、色んな壊れてるところの直しに行って来たの」
「そうか」
「うん。復旧作業も思ったより早く済みそうだって溝口さんが言ってた」
「そう」
「うん」
「フェストゥムとの戦いは終わったんだね」
私がぽつりと言うと一騎くんは「そうだな」と呟く。どこか遠くを見つめながら。
「私たちはこれからが始まりだよ。一騎くん、早く良くなったら色々と手伝ってもらうんだから」
「わかった」
「近藤くんたちも一緒にやってるの、だから」
「あぁ、わかってる」
皆城くんがいつ戻ってくるのか知らない。一騎くんも知らなかった。
ただ、信じて待つだけ。それを信じるのは簡単なようで難しい。
私はそればかりを見つめていないで欲しかった。
まだ他にもやることがある。やりながら、皆城くんを待って欲しいと思っていた。
それが私のワガママだとわかっていても。
「遠見」
「ん?」
「ありがとう」
その言葉には色んな意味が込められていた。
内容は言わずともわかる。だから、私は「どういたしまして」と答えた。
今、一騎くんが見えなくてよかったと思う。そうじゃなければ今頃ひどい顔をしてるのがわかってしまうから。
他にも言いたいことはある。けれど、それを上手く言葉に出来るほど、私はかしこくない。
「俺ら始まったばかりだもんな」
「そうだよ。私は・・・私は、みんなとの思い出を大切に抱えながら生きていこうと思ってる」
「俺は・・・・・・」
「うん。一騎くんは皆城くんを待ってあげなきゃ。―――信じてるんでしょう?」
「あぁ、アイツは絶対に帰って来る」
はっきりとした口調で、自信にも満ちた言葉で。
「じゃあ、それまでに島をきれいにしておこう?帰ってきた時に文句言われたくないもん」
「そうだな」
「うん、そうだよ」
そう言って私も一騎くんも同時に笑い出した。
病室に笑い声が木霊する。
本当は私が支えてあげたいと思っていても、それは無理だということは端からわかっていた。
一騎くんも皆城くんも、私はその間に入ることは出来ない。
だから、私はその背中を押してあげることだけ。
早く、戻ってきてよね。皆城くん。
今はどこか遠くにいるだろう皆城くんのことを思って、私は窓の外を見つめた。
今始まったばかりの平和。
いつまでもそれを守りたいと願ってやまなかった―――。
終
post script
真矢ちゃんと一騎です。
書いていて痛々しかったのですが(苦笑)真矢ちゃんの一方的な片想い。
所詮この二人の間にははいることはできないから、背中を押してあげる、な感じです。少しやきもちをやきながらだといいなぁと思って書いてみました、が、やっぱり痛々しく感じるのはなぜでしょう?(苦笑)
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