君のとなりが僕の居場所






俺にとっては彼の隣が俺の居場所で。
アイツにとって俺の隣がアイツの居場所。
二人揃うことでその居場所を確保できるのに。

今は俺だけ。

俺の居場所はどこなのだろう――――・・・・・・





総士がいなくなった日から一年が過ぎた。
竜宮島は相変わらず穏やかな風が吹き、清々しいくらいだった。
島も皆もそれぞれ笑顔を取り戻し始め、生活もだいぶ安定した頃だった。
俺はふらっと学校が終わると防波堤の傍まで寄ってきた。
いつも総士と話していた場所。
色々とあったけれど、特にこの場所での話が多かった。
楽しい話も、暗くて辛い話も。
俺がここを出ようと思った時の話も。
色々とあったけれど、でもやはり総士とここで話したことを忘れることはなくて。
むしろその記憶がここ最近すごく鮮明に思い出されることが多かった。

「総士・・・・・・お前、いつ帰って来るんだよ」

答えはないとわかっていても口に出してしまう。
口に出すことでその喪失感を感じてしまうことはわかっているのに。
帰ってくると約束した。
一年経った。
たったの一年かもしれない。
されど一年だ。
時間が経つのは早いのか、遅いのか。
俺には全然わからなかった。

「約束、破るなよな」

信じることは時に辛くも感じる。
それだけを、そのことだけを信じるにはとても気力が必要だから。
自分の髪の毛が風になびく。
穏やかな風が吹いていた。




どれくらい時が経ったのだろう。
防波堤のところに座って、じっと海面を見つめて。
太陽の位置が少しだけ移動し始めていたことに気づいても、それが何時間を指すのかわからない。
生憎今日は時計をしていないから、余計に時間の間隔が鈍かった。
海面は太陽の光を浴びてきらきらと輝く。
そろそろ帰るか、そう思って立ち上がってもと来た道を歩き始めた。
アスファルトの上を歩きながら、ふと別の方から歩いてくる一つの影があることに気づいた。
それが誰なのかわからない。島の住民だろうと思ったのだけど、なぜかその姿を必死で見つめる自分がいた。
何かが違う。
自分の直感がそう告げていた。
自然と高鳴る鼓動が警報を告げる。
少しずつ、また少しずつ近づく影を待つように、ぼうっと突っ立ったまま。
まだ影の正体はわからないのに、驚くほど鮮明に自分の口が音を成す。


「総士?」


確証はない。
なのに、どうしてだろう。
どうして、総士だと思ったのだろう。
一歩、また一歩と近づく影。
逆光で顔がはっきりと見えなくて。
どうして、言葉は総士なのだと告げているのか。
光の位置が変わった。
はっきりと見えたのはその瞳。
その変わらない茶色の髪の毛が風に揺れる。


「総・・・・・・士・・・・・・」


今度こそ確証を持って。
その瞳を見つめたままで。



「ただいま。一騎」



数歩前で立ち止まって、確かにそう言った。
俺の名前を呟いて、少しだけ笑って。


「おか、えり・・・・・・総・・・士・・・・・・」

涙腺が緩む。
今までためていた感情が一気に湧き出る。
でもそれを自分の中で抑えることは出来なくて、頬を伝って雫が零れ落ちた。
少し距離のあった総士との間も、総士が俺に近づくことで縮まる。
そっとその手が俺の頬に触れた。

「すまない、遅くなって」

「遅いよ、総士」

泣きたいのか、喜びたいのか、文句を言いたいのか、それすらわからないけれど。
でも。
総士が帰ってきたことがただ嬉しくて。

「待っててくれたんだな・・・・・・」

瞳を細めて呟く。総士の顔をきっと見つめて俺は言った。

「当たり前だ。約束したじゃないか」

俺はここにいるって、そう言ったじゃないか。
そう小さな声で呟くと、そうだったなと言って、俺の頬を撫でた。
ここにいるという感触。
生きているという証。
そうして俺はもう一度呟く。


「おかえり」


そう言うと総士は少し微笑んで。


「ただいま」


と呟いた。

俺にとっての居場所は総士の隣で。
総士にとっての居場所は俺の隣。


触れた指先が温かくて、思わずまた泣きそうになった俺の頬を、総士が優しく撫でていた。








post script
最後です。総士と一騎。やっぱりこの二人を書かなきゃ始まらないでしょう。
某アニメ雑誌の表紙は一年後を想定してと書いていたので、思わず自分の中の設定も一年となりました。
それまでは三年くらいかなぁとか思ってたのに(笑)
早く帰って来い、総士と私も思いましたよ、あの最終回。
あの最終回、なにがすごいかって、自分の身体がなくなりつつあってもそれでも一騎をちゃんと竜宮島まで送った総士がすごいと思いましたね。
もう、どっかの誰かさんに見習って欲しいくらいに(笑)
あの最終回は希望のある終わり方で良かったです。死ぬんじゃないかと冷や冷やしながら毎度見てたので。
またやらないかなぁ・・・ファフナー。何だかんだ言って最後までしっかりと見てしまいました(笑)
結構好きだったなぁ、ファフナー。


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