ふれた指先から
希望はそこにあると、そう言われたような気がした。
だから、俺は泣きそうになりながらも頑張って戦った。
もう一度咲良に会うために―――――。
母ちゃんが死んで、俺一人になって、面倒を見てくれるのは咲良の母だった。
毎日、お互いに時間を見つけては咲良の見舞いに足繁く通った。
いつ目覚めてもいいように、俺らは毎日通った。
「あら、剣司くん。おはよう」
「おはようございます、遠見先生」
「咲良ちゃんの様子見に来たのね」
「はい」
「数値は安定しているわ。だいぶ緩和されてるから、もしかすると目覚めるのも早いかもしれない」
「そう・・・・・・なんですか?」
「ええ。断定は出来ないけど」
その言葉に思わず瞳を潤ませる。俺は嬉しくて仕方なかった。
「ありがとうございます!遠見先生!」
「や、やだ・・・・・・まだ決まったわけではないのよ?」
「それでも、目覚める可能性は十分にあるということですよね?」
「そうね。前に比べたら遥かに高いわ」
「それだけで十分です!」
目覚める可能性が高くなった、それだけで満足だった。
俺は咲良のベッドの前のイスに腰掛ける。
静かに眠る咲良。目が覚めたらまた色々と文句を言われるのかなと思うと、苦笑いがこみ上げる。
いつも姉のような態度で言い、俺や衛はその後ろについていった。
その関係が崩れるなんて思ってもいなかった。
咲良は眠っているし、衛はもういない。
俺らを守って翔子達の元へと行ってしまったのだから。
「咲良・・・・・・一騎の目が治ったら皆で墓参りに行くんだ」
一人ごちて、その眠る表情を見つめた。
そうして咲良の右手をそっと優しく握る。
「翔子や衛や蔵前の墓、きれいにしようって言ってる」
数日前、一騎の見舞いに行った時にそう決めた。
一騎の目は幸いにも早く治るらしいことは聞いていたからだった。
「アイツ、最初になにやりたい?って聞いたら墓参りって言うんだぜ」
苦笑いをこぼす。
総士は帰ってくると言っていたからと墓はない。
衛は衛の母と一緒に眠っていると衛の父さんから聞いた。
この間遠見とカノンと羽佐間先生の四人で翔子の墓参りに行った。
俺の母ちゃんの墓参りも一緒に行って来た。
「アイツらしいよ。皆「わかった」ってすぐに頷いてさ。じゃあ次に何やりたいんだ?って言ったら「土いじりたい」って言ってた」
あの戦いの前に一騎の父さんにお願いしたのだと言っていた。
母のことももちろんだが、やはりその背中を見て育ってきたからだろうか、と今になって思う。
「咲良も目が覚めたら一緒に行こうな」
そう言った時だった。ぴくりと指先が動くのを俺の手のひらが感じ取る。
え?と思ってもう一度咲良を見つめた。
顔に変化はない。でも、言っていた言葉に反応したように感じた。
「咲良?」
半信半疑でその名を呟く。
「お前、わかるのか?」
自分自身、俄かに震えているのがわかった。
またもぴくりと指先が動いた。
「咲良・・・咲良っっ!」
俺の声に反応したのか、遠見先生が来た。
咲良ちゃん?と問い掛けるとまた手が動く。
「先生・・・・・・咲良が・・・咲良が・・・・・・」
「ええ、反応したわ。言葉を読み取ることは出来るみたいね」
そう言って遠見先生は笑った。俺もまた涙をこぼしながら頷いて、笑った。
その後、すぐに咲良の母と連絡をとり、すぐにかけつけた咲良の母が泣きながら笑顔だったことは覚えている。
それをみて俺もまた泣いて笑った。
触れた指先から感じる、生の鼓動。
生きていると言う希望がそこにはあって。
早く目、覚めろよ。
そう呟いて、俺はぎゅっとその手を握りしめた。
終
post script
剣司と咲良です。
本当は目が覚めてる咲良を書きたかったなぁと思いつつも、ここは外せないでしょ、ということで書きました。
ノーマルカプでは一番このカプが好きです(でも一番は総一(笑))
この二人の不器用な恋愛模様好きだったー。衛がいたらどういう風になってたかなと思うとちょっと切ないですね。
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