墓標に花、咲き誇りて
そっと花を添えた。ぱさりと音が鳴って、その墓標の前に置かれる。
目の治療が終わり、また光を取り戻すことが出来た。
そうして真っ先にやりたいことと言えば墓参りだった。
翔子、衛、道生さん、蔵前。
俺らはそれぞれに花を添えるともう一つ島で唯一立てられたそれの前に屈んだ。
この戦いでなくなった者たちへと、父がそう言って作った墓標だった。
この者たちがいたからこそ今の平和があるのだと、だから、忘れないためのものだと言っていた。
「俺、衛も母ちゃんもいなくなってさ、本当に凹んだ」
「私も翔子があんな死に方して、正直どうしていいかわかんなかった」
「母ちゃんも、衛も俺のこと守ってくれたのに、俺は何もできなかった」
「私だって、翔子は一騎くんとの約束を守るために、この島を守るために死んでいった」
剣司と遠見は呟いた。それをカノンは黙って聴き入っている。
空は蒼かった。
あの日と同じくらいに、蒼い空。
「たくさんの人たちがいなくなっちゃったね・・・・・・」
遠くを見つめながら遠見は言った。空へと消えていった命を想いながら。
「道生も今頃空の彼方で笑って見守っていそうだ」
カノンは言う。たしかにな、と剣司が頷いた。
「道生さん、赤ちゃん見たかっただろうなぁ・・・・・・」
「あの人子煩悩っぽそうじゃん」
「確かに」
「それにしても、春日井くんはどこ行っちゃったんだろう。・・・・・・皆城くんも」
「総士は今頃戻ってくるために頑張ってるだろ」
剣司が言いながら微笑んだ。それぞれ感慨深げに空を見つめる。
「私たちは亡くなった者達のためにも、恥ずかしくない生き方をしなければ」
「そうだな・・・・・・」
カノンの呟きに俺が頷く。みんな無言で頷いていた。
今も思い起こせば、亡くなった者たちの笑顔が蘇ってくる。
決して戻ることない時を、忘れることはないだろう。
「なくなったものもたくさんあるけど、生まれてくるものもあるだろう?」
俺は遠見を見るとこくりと頷いて「そうだね」と言った。
道夫さんと、遠見の姉である弓子先生の子供。
自然受胎だと言っていた。
生と死は隣り合わせだと言うことを再確認する。
ワルキューレの岩戸に戻った乙姫もまた、再び命を吹き込んでいた。
そうだ、なくなるものもあれば、またうまれていくものもいるのだと、思う。
皆、空を見つめていた。
青々と広がる空の彼方にいるであろう、かつての仲間達のことを想いながら。
墓標の前に花が咲き誇る。
亡くなった者たちへ哀悼の意を捧げながら、新たに誓いを立てて、俺たちはその場を後にした。
次に来る時は、総士も連れてこれたらいい、そう思いながらちらりと横目でその墓標を見つめていた。
もう、こんなことがないようにと願いながら――――。
終
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四人の呟きです。最初書いてたらあまりにも暗くなったので、少し明るめにしました。
生と死の隣り合わせと言う事実。いなくなった者たちを忘れないようにという思いで書いてみました。
最後までみんなそれぞれの守りたい人たちを守って死ねたということはある意味幸せなのかなとも思います。
守りたいもののためなら命を捧げる覚悟、それはなかなかできないことです。
私は、そういう意味で亡くなった人たちへありがとう、と言いたいなと思いました。
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